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BRIGHT ━━君が教えてくれたこと━━
プロローグ(2)
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うで」

 結は目を丸くし、数秒の間立ち尽くしていたが、すぐに納得した。凛はきっと、女子高生にしてガンなどというつらい病気にかかって、少し弱気になっているのだ。結としては、朝まで一緒にいてやりたいところだ。しかし、面会が許されているのは9時まで。手術直後の凛の為にも、結はそれまでに病室を出なければならない。

「また明日も来るよ」

 結は妹の頭を優しく撫でると、病室を後にした。

「結……ッ!」

 すがるような、妹の声が聞こえた。








 結は、雪の積もったアスファルトを歩き続けた。辺りは銀世界とまではいかないが真っ白。寒さの為か、人通りはほとんどない。あまりに綺麗な景色に、思わず見とれた。
 しかし、突然 視界に黒いものがうつった。
 蝶だ。黒い蝶。だが、ありえない。今は冬、蝶が飛んでいるはずがない。
 ━━窓の外に、黒い蝶の群れを見たの。
 ━━あたしが……結が、消えちゃいそうで。
 何だか不気味に感じ、結はその場を避けた。しかし、蝶は群がりながら結についてきて、どんどん距離を詰めてくる。

「━━ッ!?」

 どれだけ走っても追ってくる。やがて蝶が、結の体にまとわりつき始めた。振り払う為、結は腕を動かそうとする──しかし。

「━━えっ」

 何故だか、蝶がまとわりついた体の部位は、まるで言うことを聞かない。どれだけ力を込めようと、ピクリとも動かない。終いには体が勝手に動き出して、近くの10階建て高層ビルの中に入っていく。

「だッ、誰か──」

 叫ぶが、自分の声が跳ね返って響くばかりで、返事はない。遂にたどり着いたのは──10階。結は冷たいものが背中を滑り落ちるような感覚に苛まれた。勝手に動く手は、屋上の扉を開け、結の意思と関係なくその端へと進む。
 下界が見える。ここから落ちれば、確実に──。

「ちょっ……止まって!お、落ちる……」

 どれだけ言っても、足は歩みを止めようとしない。落ちるまであと3歩、2歩──。

「嫌だ……っ」

 結の顔は瞬時に青ざめた。下から野次馬たちが見ている。
 ──なんで? さっきまでは、誰もいなかったのに。
 今はそんなことを考えている場合ではない。もしかしたら、誰かが受け止めてくれるかもしれない──。思ったその瞬間。
 1歩──……0。
 結は、10層にも重なるビルを落下していった。蝶が三々五々に飛んでいく。やっと自由になった手を上に伸ばすが、虚しく空を切る。
 その時、誰かの声が聞こえた。

「──ユイ」

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