第十八話 〜ひとときの休息 後編【暁 Ver】
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なのだ。貴重な休日を台無しにされた恨みもあったが、自然と口にしていたのだ。それを聞いたスカリエッティは子供のように笑っていた。
『いや、失敬。久しぶりに楽しめたよ。……名を聞いておこうか』
「知っているはずだけど。まぁいいわ。ティアナ・ランスター」
『憶えておこう。ミス・八神は仲間や部下に恵まれるようだ。約束通り違法研究所のデータを転送しておくよ。……次を楽しみにしておく。精々、励みたまえ』
それきり通信は途絶え、何も聞こえなくなった。反応を見る限りは正解だったようだ。
「え、何? 今の会話はどういう事?」
スバルが混乱しているが、放って置こう。今はこれを解除してアスナを休ませてあげないと。あたしはブラックボックスへと近づき、それを打ち込んだ。
階段から足を踏み外す。或いは。そこに地面があるものだと足を踏み出してみれば、何もなかったような感覚。落下。転落。墜落。無駄だろうと思いつつも手を伸ばすが、何も掴めなかった。固定化すら出来なくなったらしい。頭から真っ逆さまに落ちていく。びゅう。びゅう。と風が鳴いている。心の中で親友二人に謝りながら、もう一度手を伸ばす。空には真夏の太陽。幼い頃、兄から子守歌代わりに聞かされた神話を思い出す。空へと挑んだ愚者の話。私もきっと、どんなに高く飛ぼうとも。神話の主人公のように翼を焼かれ落ちるだけなんだ。それでも────
「……もっと高く飛びたかった」
──── なら、そうしましょう。一緒に。
視界が青から黒へ。私が一番安心できる暖かさと煙草の臭い。
「間一髪ですね。『飛ぶ』のは久しぶりでしたが、間に合って良かった」
いつかのあの時──── この人は突然現れて私を救ってくれた。今と同じように。
「アスナ、どうかしましたか? どこか痛いとか?」
いつも通りの口調。だけど、顔が真っ青だ。唇も震えている。心配させてしまった。だから私もいつも通りに、この言葉を紡ごう。
「……おにいちゃんは真っ黒で暑苦しいな」
「えぇ!?」
うん、この方が私らしい。この夏の真っ盛りにこんなに黒いのは、兄か花林糖ぐらいのものだ。だけど喜んでもいられない。私は──── 行かないと。止まってしまった。私が彼女達の安否を確かめる為に兄の腕から抜け出そうとすると、私を安心させるように兄は微笑んでくれた。
「ティアナさんもスバルさんも無事ですよ。勿論、他の皆さんも」
そんな、どうして。ティアナが間に合った?
「色々と考えなければいけないことがありますが。取り敢えず今は戻りましょうか。皆さん、心配しているはずですしね」
兄はそう言いながら、『跳ぼう』とする。違う、『飛んで』いけ。それと、流石にこの
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