第十八話 〜ひとときの休息 後編【暁 Ver】
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なものだ。……意味が無い? それはパスワードなど存在しないと言うこと。これだと、あたし達は既に詰みだ。だったら、もう一つの可能性──── わかった。お兄さんには感謝だ。だが、これだとするならば、確認しなければいけないことがある。
意識を浮上させる。内面世界から現実へと。視界がクリアになり瞳が焦点を結ぶ。あたしの変化にいち早く気付いたスバルが声を掛けてくる。あたしはそれに片手を上げるだけで答え立ち上がった。全員があたしを見ている。だが、その期待にはまだ応えられない。あたしは息を吸い込むと言葉を発した。
「ジェイル・スカリエッティ、聞こえてるわよね? 一つお願いがあるんだけど」
足が鉛のように重い。視界が汗で滲む。このまま止まってしまいたい。……冗談じゃ無い。もっと飛ばなければ。もっと。もっと遠くへ。高く、高く。
──── 凄いとは思うけどね。実際に空戦を行うなら空士の方が有利だよ。
うるさい。私は飛んでいる。どうして、こんなことばかり思い出すのか。
──── ペンギンが一生懸命に羽ばたいたところで、地上に墜ちるだけだよ。
黙れっ。
「……あ」
私が踏み出したその一歩は……文字通り空を切った。
『まさか、そちらから話しかけてくるとはね。驚いたよ』
スピーカーから聞こえてくるスカリエッティの声は、言葉に反して全く驚いている様子が見られなかった。それよりも周りにいた皆の方が驚いた顔をしている。
「一つだけ質問をさせて欲しいわ」
『パスワードを教えろなどと言うつもりではないだろうね?』
「それこそまさかよ。どうせ尋ねても教える気はないでしょう? そんな事はしない。あたしの秩序と信念に誓ってね。その代わり……あなたの秩序と信念に誓って嘘偽り無く答えると誓いなさい」
今度こそ。スピーカーの向こうでスカリエッティが息を呑む気配がした。
『良いだろう。質問を一つだけ許可しようじゃないか。私も嘘偽り無く答えることを誓おう』
よし、乗ってきた。慎重に言葉を選びなさい、ティアナ・ランスター。
「あなたはあの時……パスワードはあると答えた。それに間違いは無いわね?」
皆が驚きの声を上げた。それはそうだ。今更こんなことを聞いたところで意味は無いのだ。だけど、あたしが確かめたいのはそう言うことじゃないのだから。スカリエッティは暫く沈黙していたが、やがてこう答えた。それは、皆にとっては予想外であり、あたしにとっては予想通りの答えだった。
『違うよ。私はパスワードはあるよと答えたんだ』
──── 大当たりだ。
「ありがとう」
犯罪者にお礼などどうかと思ったし、元々は向こうが仕掛けてきた喧嘩
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