第十八話 〜ひとときの休息 後編【暁 Ver】
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……あたしたちの判断は正しかったのだろうか。
お兄さんと言えば定期的に連絡を取り合うようになった。勿論、色気のある話では無い。自分には無い『技術』を学ぶ為。最近はどんな話をしたっけ────
ぎり、と。奥歯を噛みしめる。彼女の中の『八神部隊長』は、おまえは正しいと告げている。だが、『八神はやて』が、おまえは最低だと囁いていた。アスナの実家を訪れた時。彼女の兄に対して言った言葉が思い出される。
──── せやけど、家族を守るんは当然やと思います。
「どの口が言うとるんや……」
無様、としか言いようが無かった。頭を押さえられ、手足に杭を打たれ、テロリストの要求を呑んだ。全ては──── 自分の甘さが引き起こした失態だと。次元世界の秩序と平和を守る。それだけを信じてここまで来た。その自分が。仲間と一般人を危険に晒している。自分の、甘さが。
埃っぽい制御室の中を見渡す。フェイトは床に座り込みブラックボックスを睨み付けたまま動かない。エリオとキャロは今にも壊れそうな彼女に寄り添っていた。スバルは壁に背中を預けたまま、険しい表情で何か考え込んでいる。ティアナはフェイトと同じように床に座り込んでいるが、彼女は『戦闘中』だ。ティアナがやってみせますと言ったのを、はやては信じた。だからこそ、彼女達はここにいる。
『ボブ』は焦っていた。彼女が走り始めてから35分。予想よりも遙かに体力の消耗が激しい。予想して然るべきだった。出口の見えないトンネル。速度を落とせば一般人は愚か、大切な仲間が危険に晒されるというプレッシャー。加え寝不足による体調不良が、アスナの体力をいつも以上に削っていた。突然アスナの体制が崩れる。
『アスナっ』
「……へい、き」
『アスナ。高度を下げるんだ』
ボブにとっては至極当たり前の提案。この高度から落下などされては堪ったものでは無い。だが、アスナの口から出てきたのは拒否の返答だった。
──── 鳥は。高く飛ぶものだから
「さて、お兄さん。今日はどんな手であたしを騙すんでしょうか?」
モニタの中のお兄さんは渋い顔をする。それと寝癖を直してください。
「先ほど仮眠から起きたばかりなんですよ。……騙すって言うのは人聞きが悪いですね」
どの口が言っているんだろう。今のところあたしが負け越している。今日はあたしが勝たせて貰うわ。
「……いつから勝負になったのかわかりませんが」
お兄さんはそう言いながらマグカップの中身を啜る。
「何を飲んでるんですか?」
「珈琲です」
「中身を見せてください」
お兄さんは苦笑しながらマグカップを傾け中身を見せる。確かに珈琲のようだ。
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