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空を駆ける姫御子
第十八話 〜ひとときの休息 後編【暁 Ver】
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まった。バリアジャケットやフラッターの起動も出来ない。アスナにとっては最悪の状況だ。終わりの見えない持久走。()()に賭けるしか無い。アスナが一番信頼している少女の一人を。





 アスナが空を駆けていく。ティアは既にスカリエッティから与えられたヒントを元に解除用のパスワードを探している。……ヒントの範囲が広すぎるよ。砂漠から一枚のコインを探すようなものだ。床に座り込んだティアは眼球だけを忙しなく動かしながら、微動だにしない。ティアがこれほど深く()()のは久しぶりだ。ティアは、『Mental・Dive(思考潜水)』と呼んでいた。外界からの情報を遮断して、思考を複数に処理しながら、与えられた情報を元に推論を組み立てていく。

 あたしが凄いねと言うと、推論は推論でしかなく正解じゃないと返された。ティアは保有魔力とか魔法の才能とか昔ほどじゃないけど、今でも少し気にしている。だけど、あたしから言わせればティアは自分の凄さに全く気付いていない。わかっている情報を選択、そして破棄しながら、限りなく正解に近い推論をパズルのように組み立てる。それがどれほど凄いことなのか、ティアはさっぱり理解していない。

 あたしも考えなきゃ。あたし達がここに来ることが、予めわかっていたかのような準備の良さ。いや、わかっていた筈なんだ。問題はそれをどこから知ったか。外部からのハッキング? ……可能性は低い。完璧なセキュリティなどないけれど、管理局の防壁は強固だ。

 アタックを仕掛けてきた侵入者の情報を取得し、必要であれば攻撃する幾重にも張り巡らされた防壁。予め決められた手順を踏まなければ、物理的にネットワークを遮断するシステム。これを外部の人間が破るのは至難の業だ。だとするなら。内部から漏れたと考えるのが妥当だ──── 一人いる。()が六課に来たタイミングも良すぎる。スカリエッティと繋がっているとは考え難いけど……いずれにせよ、調べてみる価値はある。その為にも、今はティアを信じるしかない。





 静寂の音。とくとく、と。自分の心の音を聞きながら思考を走らせる。

──── 今までの会話を思い出してみたまえ

 悪態をつきたくなるのを何とか飲み込む。ヒントになっていない。単語なのか文章なのか。それすらもわからないときた。あたしはもしかしたら、無駄なことをしているのかも知れない。パスワードが本当に存在しているのかどうかもわからないのだから。だからといってやらないわけにはいかない。

 アスナには嫌な役を押しつけてしまった。最終的な判断は八神部隊長だけど、『ボブ』の八神部隊長への不信感を植え付ける事になった。お兄さんがどう思うかが、最大の問題だけれど。二人揃って過保護すぎる嫌いがあるが、今回のケースは
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