第二十話「壮絶料理対決 前編」
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それで、なにを作るんだ?」
「シーフードカレーよ。得意料理なの」
驚愕のワードがクレアの口から飛び出る。
「シー、フード……カレー……だと?」
市販のルーを溶かし、よく煮えたところで皿に盛りつけた食材を一気に投入する。
「ん〜、これだと辛すぎるかな。そうだ! チョコ入れたら甘くなるわよね!」
ドバドバー。
なにを考えたのか、大量に板チョコを入れるクレア。
「隠し味にサバ味噌缶も入れてっと……」
美味しくなーれ、と可愛いことを呟きながら鍋をかき回す。鍋からは美味しくなさそうな異臭を放ちボコボコと嫌な音を立てている。
前世で師匠と食べた闇鍋を彷彿させるカレーだ……。
(ここは指摘するべきか? ……いや、曲がりなりにも女子がわざわざ作ってくれているんだ。それを駄目出しすべきではないか)
これは覚悟を決める必要がありそうだな……。まあ、大丈夫。死にはしないだろう。……たぶん。
気を取り直して今度はフィアのところに向かう。
水色のエプロンをつけたフィアはリズムよくニンジンを刻んでいた。慣れているだけ流石に手際が良い。
「なにを作っているんだ?」
「オルデシア王家特製、ビーフシチューよ」
「ビーフシチューか。自信ありそうだな」
「もちろんよ。〈神議院〉にいた頃は月に一度、高位の精霊に料理の御膳を奉納する儀式があったけど、みんな私の御膳に満足して元素精霊界に帰って行ったわ」
「ほう、それは期待できそうだな」
精霊に奉納する料理は味より見た目を重視するため、人間の食べる料理とは若干異なるだろう。だが、過去に数回彼女の手料理を食したことがあるからその辺りの心配はない。
徐に取り出した瓶の中身を豪快に投入するフィア。
赤い粉末と覚えのある匂いに頬が少し引き攣った。
「今のは何を入れたんだ?」
「唐辛子よ。隠し味に丁度いいの」
「……ほう、唐辛子……それも一瓶、か」
見れば鍋のスープは真っ赤に染まっている。
――隠し味って、一般的にこういう使い方をしたか……?
「……大丈夫なのか?」
「――? 平気よ。ほら、綺麗な色をしているじゃない」
確かに、綺麗な緋色ですね。
不安が募るばかりの俺を置いてきぼりにし、マイペースに調理を進める。
トントンとリズミカルな音を耳にしながら、まな板に視線を落とす彼女の横顔を眺めた。
切れ長の鋭い目に雪のように白い肌。
調理の邪魔にならないように結い上げた漆黒の髪。覗く白いうなじは
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