第十七話 〜ひとときの休息 前編【暁 Ver】
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…唯の夢よ。気にすること無いわ。ここには、あたし達がいる。お兄さんもいる。あなたを、一人になんかしない」
しまったと思ったが、もう遅い。一度口にしてしまった言葉は無かったことには出来ないのだから。恐る恐る周りを見渡すと、全員が顔面に拳を叩き込みたくなるような顔をしていた。我ながら恥ずかしい台詞を口にしてしまった。失態だ。
「……ごめんなさい。私には心にきめたひとが」
「ややこしくなるから黙って、お願いだから」
本当に、失態だ。
曇った笑い声。『白衣の男』は目の前のモニタに映る少女達をお気に入りのおもちゃを見つけた子供のような目で見ていた。
「暢気なものですね」
白衣の男に影のように付き従っている女性が呟く。その音色には、明らかに侮蔑が込められていた。白衣の男は女性へちらりと視線を送ると、すぐにモニタに視線を戻した。
「仕方ないさ。エリートとは言え、まだ年若い。……まぁ、『ドゥーエ』からの報告を聞いた時は、流石に耳を疑ったが。全員で来なかっただけ、マシかも知れないね。私としては残念だが」
白衣の男は肩を竦める。
「あれほど、派手に暴れて……挑発までしたと言うのに。危機感というもがないのでしょうか」
「ミス・八神は随分と身内には甘いようだね。人としては美徳なのかも知れないが、指揮官としては……どうかな。だから用意したのだよ。嫌でも指揮官という立場を自覚しなければならない『ゲーム』をね。私たちの敵がそんな腑抜けでは──── つまらないだろう?」
白衣の男は、『敵』と口にした如何にも陳腐な自分の台詞に苦笑いを浮かべた。彼は、此の世に善も悪もないと考えている。只あるのは倫理観や思想が異なる者がいるだけだと。それを受け入れることが出来なければ、互いを敵と呼ぶだけなのだ。彼は自分の正義感を此の世の常識だと言わんばかりに振りかざし、他者を悪と断ずるような人間を嫌悪していた。
「さて、君たちはどちらかね」
そう呟く男の視線の先には。これから自分達の身に災厄が降りかかる事など、微塵も考えてはいないような笑顔を浮かべている少女達の姿があった。
『その提案には賛成できない。私はただ、デバイスを制御する人格AIとしてアスナと共にいるわけではない。私の役割は桐生の代わりにアスナの身を護ること。もし失敗した場合、アスナの精神的負担は計り知れない。故に許容出来ない』
「……ボブ? お願い、アスナが一番適任なのよ」
『知ったことではない。アスナ止めるんだ。敵前逃亡、命令違反、契約不履行。好きな物を適用するといい』
「……やる」
『正気か? ……わかった。もう何も言わない。言っても無駄のようだ。私は全力でサポートに専念しよう』
「
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