第十七話 〜ひとときの休息 前編【暁 Ver】
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とこうだ。いつの間にこんなに懐いたのだろうか。そんな三人の後ろ姿を、まるで母親のような顔をしながら付いてきていたフェイトさんへアスナが視線を向ける。
「……キャロとエリオをうちの子にします」
「あげないよ」
「フェイトさんの顔が、一瞬で素に戻っちゃったよ」
「フェイトちゃんは、過保護なとこがあるなぁ。まぁ、ええやろ。甘えるのも甘えられるのも、今のうちだけや。せやけど、将来キャロをくださいって男とか、エリオが彼女を連れてきたりとかしたら、どないするん?」
「私を倒しなさい」
「これ本気で言うとるんやからな……」
八神部隊長の言う通り、フェイトさんは真顔だった。あたしがいつもの喧噪に耳を傾けていると、アスナが眠そうに目を擦っているのに気が付いた。
「どうしたの? 眠れなかったの?」
あたしがそう問いかけると、アスナは少しだけ逡巡した後、こう切り出した。
「……最近、へんな夢をみる」
「夢?」
「……たぶん、地球。私はふつうの女の子で、ふつうに暮らしている。魔法はあるけど、こっちの魔法とは違う感じで、毎日学校へいく。親はいないけど、ともだちもいる。だけど」
──── ……おにいちゃんがいない
傍若無人を体現しているようなアスナだけれど、意外な時にメンタル面の弱さを見せる事がある。お兄さんへの強い依存心。アスナにとって、お兄さんは絶対なのだ。あり得ないとは思うが、お兄さんがあたし達の敵に回ったら。アスナは躊躇すること無くお兄さん側に付くだろう。そして、もう一つ。他人への無関心。こちらは少しずつ緩和されているが、まだ酷い。訓練校時代。犯罪者を相手に、どういった行動をするのが適切か、シミュレーションするカリキュラムがあった。
「不自然な状況ではあるが、あくまで例として挙げる。一般人と管理局員が人質に取られている状況。状況的に二人とも助けることは不可能。さて、桐生候補生。君はどちらを助けるかね?」
管理局員であれば。魔導師を目指しているのであれば。一般人の保護が最優先だ。……それが例え建前だったとしてもだ。だが、アスナは。迷うこと無くこう答えた。
──── ……ふたりとも見捨てる
極端な話をしてしまえば、それが一番効率がいい。何の枷も無くなるのだから。そう答えたアスナをスバルが珍しく叱ったのを良く憶えている。その時のアスナは、自分が何故怒られているのか全く理解出来ていないようだった。今更ではあるけれど、良く卒業出来たものだと思う。これは、教官の力が大きかった。
御陰で唯一、アスナの餌付けに成功した教官として名を馳せることになった。本人は『ゲヌイトのおっちゃん』と、アスナに呼ばれる度に渋い顔をしていたけど。
「…
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