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空を駆ける姫御子
第十七話 〜ひとときの休息 前編【暁 Ver】
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くお互いの顔を見合わせていたが、やがてこの部屋の主である少女の顔へと視線を移した。

「……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「なぁ、アスナちゃん。扇風機で遊んどらんで、首回そうや」

「……や」

「そないな事しとると、一台一台丹精込めて組み立てとる職人さんに失礼やで」

 扇風機職人など聞いたことはないし、恐らく工場生産だ。

「……ミキプルーン?」

「どっちかって言うと、ドモホルンリンクルやな。そんなんどうでもええ」

「八神部隊長? きりが無いので本題に入ってください」

「ああ、ごめんなぁ、ティアナ。……せやから、私らにも風よこせ言うとるんやっ」

「八神部隊長、本題が違います」

「あれ? そやったっけ。ああ、山……ちゅうか、キャンプやな。アスナちゃんも行くやろ。魚釣りして、釣った魚を焚き火で焼いて食べたりな。きっと楽しいわ。……根を詰めるのもええけど、息抜きはせんとな」

 その時。アスナの視線が一点に固定されたまま動かなくなった。まるで。どこか違う光景を見ているような、そんな瞳。アスナは時々、こんな遠い目をする事があった。空を見上げている時と同じ瞳。懐かしさ。憧れ──── 郷愁。あたしやスバルはその姿を目にする度に、掛ける言葉が見つからずに歯痒い思いをするのだ。

「……アスナちゃん? 涎出てんで」

 色々と台無しだ。……焚き火で焼いた魚に思い入れでもあるのだろうか。それはさておき。あたしとスバルはこの時、反対すべきだったのだ。アスナの持って生まれた運は、漫画に出てくる少年探偵並にトラブルを呼び込んでくることを知っていた筈なのに。





「風が気持ちいいね、エリオ君」

 問われた少年は抜けるような青空をすいと見上げ、風を感じるように目を閉じた。

「そうだね……久しぶりかも。こんな感じ」

 意外と整備されている山道。緑色した香りを穏やかな風が運んでくる。

「……二日もネットができない」

 アスナの発言にエリオとキャロは苦笑を浮かべ、あたしは呆れた顔をする。

「あんた、本当にインドアよね。小さかった頃は外で走り回ってたって、お兄さんから聞いたことあるけど……何で?」

「……おともだち、いなかったから」

 アスナの口から紡がれた小さな呟きを聞いたあたしとスバルは、似たような表情をしていたはずだ。あたし達も似たようなものだったから。あたしは家庭の事情と妄執。スバルにはギンガさんがいたけど……自分の体のこと。アスナの場合は、自分から他人を遠ざけていた節があるけど。

「わたしはお友達です、アスナさんの。勿論、エリオ君も」

「はい」

 今現在、キャロはアスナの左手を。エリオは右手を握っている。山道に入ってからずっ
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