後輩と北欧の主神
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に知っているだろうと思う。不思議とそう理解出来た。
だが、他人に自分の事を事細かに知られている。それが凄く気味が悪い。
「…そうじゃの、私の名は“オーディン”。これでも北欧の主神をしておる。」
「……オーディン」
思わず、その名を反芻する。
目の前の隻眼の老人は確かに北欧神話に出てくる戦争と死の神、オーディンの偶像と酷似している。
相手が本当に主神クラスの神格の持ち主ならば、尚更解らない。
何故、この様なビッグネームの神様が接触して来たのかが。
「オーディン、貴方が私に接触してきた理由は何ですか?」
「うむ。単に主に興味が沸いたのじゃよ。秩序を…世界の修正力に打ち勝った主に」
「…先程から言っていますが、それは一体?」
彼の指している事。
話の趣旨が理解出来ずに、私は思わず小首を傾げる。
「時に真綾よ。お主が、世界の住人が何故暮桜霧嗣の事を忘れていたと―――いや、あの男が“世界から消された”と思う?」
それは私自身も疑問に思っていた所だ。
何故、私はあんなにも大切に想っていた先輩の事を忘れていたのか。
何故、世界は先輩が元より存在していなかったかの様に動いていたのか。
その理由は定かではない、きっと私程度では推し量れない事だろう。
「…何故、なんですか?」
「その前に、主に謝らなければならないのぅ」
そうして、主神たるオーディンは語り始めた。
自身の身内が手違いを引き起こし、先輩を間違えて死なせてしまった事。
先輩がその死を受け入れて、新たな世界に転生をした事。
そして先輩がその神様候補生に頼み、自身の存在を世界から消した事。
「本当に、身内が迷惑を掛けた。すまなかった。私が叶えられる望みであれば、出来うる限りの事を叶えよう」
そう言い、頭を下げる北欧の主神。オーディンは知っていたのだ、真綾のその思いの強さを。
故に、世界から消された男の事を思い出した。
彼を想うあまりに、自らの生命を沼に投げる様にして後を追った。それ程までに想っている事を。
私はそんな主神の姿を見ていられなくて、直ぐに頭を上げて貰う様に告げる。
「頭を上げて下さい。確かに自らの保身の為に走るその候補生に思う所はあります。けど、先輩が許したのなら私が言う事はないです。それよりも―――」
私はそう言いながら、言葉を告げる。
胸の内に、沸々と煮え滾る様な感情が灯る。それは怒りと言ってもいいだろう。
「私が許せないのは先輩です。先輩がした事は独りよがりの善意でしかないのですから」
そう、先輩がしでかした事は独りよがりの善意でしかない。
私が生きている時に先輩について聞いた人達は覚えては
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