後輩、散る者
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から外されたかの様で、解放感を私は感じていた。
それから私は、昼食は裏庭で摂る様になった。
そして何度目かの昼休みの事だった、先輩が私に話を掛けてきたのは。
それが、始まり。
私と先輩の関係の…そして、私という人間の始まりだった。
色褪せて見えていた景色に徐々に色を、私の心に感情を灯す事になる、劇的な出会い。
1
それからはぎこちないながらも、口下手ながらも、会話をする様になった。
誰かと身近になって話す事など、今までの私の人生の中ではあり得ない事だった。
一番身近であり、遠い存在である両親ともそんな話などした事はなかった。
そんな先輩と過ごす時間、交流を、私は知らぬ内に大切なものであると感じ取っていた。
そして、彼が所属する同好会にも所属する事になった。今の大学のサークルの前身になった存在だ。
先輩は普通の中学生ではなくて、“揉め事処理屋”と呼ばれる仕事を学業と兼用していた。
私を助けたのは、その普段の仕事の職業病の様なものであると。
その時ほど、人に感謝した事はない。
私に力で物を言わせようとした上級生。その存在がいなければ、私は先輩と関わる事はなかったと。
中学時代。
霧嗣先輩や他の私が気心を許せる人達がいた時間は楽しかった。
本当に、楽しいと思う刹那は瞬く間に過ぎて行く。それを永劫味わっていたいとすら思った。
彼らが卒業してからの学生生活は、また灰色の日々。ロボットガールとして日々を過ごした。
高校、そして大学は先輩や皆がいるという理由で同じ高校・大学を選んだ。
何時の間にか、私という人間の大多数を先輩が占める様になっていた。
―――だけどもう、その先輩も“この世界には存在”しない。
どういう訳か、嘗ての仲の良かった人々も先輩の事を忘れてしまっている。
まるで世界から消された様に、私以外の誰もが彼の事を覚えていない。
だから…だから、私は……。
2
真綾side
《某所・交差点》
今日の天気は雨であった。
ここ数日間の間、空は灰色に染まって、空より怒涛の如くの雨が降り注いでくる。
「…………」
私はただひたすらに、長い時間の中を待っていた。
雨で濡れそぼつ衣服や髪など気にせずに、ただ私は其処にいた。
濡れた冷たさが身体を襲う。だが、それ以上に私の心は冷たくなっていた。
先輩が命を落とした交差点。其処はまるで事故などなかった様に、綺麗になっている。
先日確認した事だが、先輩という人間はこの世界には存在しない事になっていた。
長い付き合いのある卒業した先輩達も、霧嗣先輩の事など知ら
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