第8話:オリエンテーションキャンプ(1)
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例を述べ、椅子から腰を上げた。そんな俺を見て、二人はほっとした様子をしていた。知子は、「たっくんは乗り物に弱いんだから酔い止めをしっかり持っていかないと」と左の手を腰に、右の人差し指を俺の鼻先に置いて説教をしていた。響は、「飲み物はしっかり買っておくのよ」とお母さんみたいなことを言う。時計を見て出発時刻が近くなると、俺達はそれぞれ自分のクラスに割り当てられたバスに乗車した。
「お〜遠野、やっと戻ってきたか!いま大富豪やっていたんだけど、お前もやらないか?」
「途中参加も歓迎」
体調不良を理由に俺は再び席に座って、再び来るであろう吐き気との戦いに心を集中していた。先生が全員いるかどうかを確認し、バスが発車する。その後、トランプやウノで勝っただの負けただのという、どんちゃん騒ぎでやかましい後ろの席の声を頭の後ろで聞きながら俺は吐き気との戦いを再開することになった。
戦いは終わった、俺の勝利である。昼過ぎにコンクリート製の施設に到着し、俺は押し寄せる吐き気を抑えきったのだ。バスから降りて集合と先生の長々とした注意事項の説明、施設の管理者の挨拶を聞くという体力消耗地獄が待っていた。会話の内容は一切覚えていない。地獄を終えると俺はフラフラした足取りで施設に入り、長廊下を歩いて自分が割り当てられた部屋に入る。入り口のすぐそばのベッドを見つけてさっさとメイキングして泥のように眠ることとなった。押し寄せた吐き気に耐え切るために要した体力が半端なものではなかったので、身体が休ませてくれとコールを出した結果であろう。同じ部屋のクラスメイトは俺を起こそうとしたものの一切起きなかったそうだ。彼らの置き土産である顔の落書きが俺の深い睡眠を物語っていた。水性だったから良かったが落とすのが面倒くさいぞ。
顔を洗っても意識はぼんやりしたままの俺は部屋の外に出る。渡り廊下にどうやら誰もいないようであった。少し廊下を歩くと、掃除していた施設の職員が見えたので他の生徒は何をしているか、と尋ねた。どうやら、少し遅めの食事を取っているそうである。
(……そういえば気分は良くなったし、良く寝たから身体も調子が良くなったけどお腹すいたよなぁ…、でもみんながご飯食べている時に入るのは気が引けるし、もう一眠りするか〜)
ボサボサの頭を掻いてそのまま回れ右、そのまま元来た道を戻るため歩を進める。
「たっくん、やっと起きたの?」
「その様子だと良く眠れたみたいね」
三歩くらい足を動かすと何年も一緒にいて聞きなれた声が聞こえた。ぼーっとした顔をしたまま、よく聞く二つの声の方向へ振り向く。言わずもがな、知子と響である。二人とも女子用の少々濃い赤色のジャ
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