第十六話 〜彼女たちのお話 -ティーダ・ランスターの章-【暁 Ver】
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は指示のあった場所へと飛んだ。
「抵抗はしないでくれると助かるよ」
らしくない冷たい声だと思いながら彼女へと警告する。上司から説明を受けた時に理解はしていたけれど、本当に綺麗な女性だった。僕はトリガーから外していた指を掛けると愛銃を彼女へ構えながら再度警告する。
「デバイスを待機状態に戻してこちらへ放ってくれるかな。もし抵抗するなら……管理局法第二十六条第三項に於て正当防衛を適用し反撃する。勿論その場合、身の安全は保証できない」
女性を撃つのは趣味じゃないけど、僕には帰る場所がある。半ば戦闘になる事を予想していた僕の決意は良い意味で裏切られる事になった。彼女は至極あっさりと……拍子抜けするほど簡単な動作で、待機状態に戻したデバイスを僕の足下へ放った。僕は気が抜けそうになるのを何とか堪え、彼女から目を離さずに放られたデバイスを足で蹴る。からからと剥き出しのコンクリートの床を転がっていく音を聞きながら彼女へバインドを掛けた。
「ティーダ、無事かっ」
「へ?」
思わず間の抜けた声を上げてしまった僕を誰も責められないだろう。
「……どうして来ちゃうんですか」
上司は恥ずかしげに頬を人差し指で掻く。
「そう言うな。いても立ってもいられなくてよ。……どんな塩梅だ」
「え、ええ。全く抵抗しませんでしたので」
僕は目線で状況を伝えるように、バインドで拘束されている彼女を見る。上司も不思議そうな顔をして僕につられるように彼女を見た。
「抵抗しなかった? 全くか? ……まぁいい。どれ近くで面でも拝ませて貰うか」
また、悪い癖が出た。
「乱暴なことしないでくださいよ?」
僕の言葉にひらひらと手を振りながら彼女へと近づいていった。僕が遠ざかっていく上司の背中を見ながら再度苦笑を浮かべ、さて応援はいつ来るのかなと考えながら後ろを見た時──── 白色の閃光が僕の脇を駆け抜けていった。
「──── え?」
僕が立っている床の目の前にびしゃりとぶちまけられる赤黒い何か。次に感じたのは焼け付くような熱さ。怖々と脇腹に這わせた指が、空気を掴む。右脇腹が──── 無かった。腹の底からこみ上げてくるものを耐えきれずに吐く。赤い──── 朱。あの日に見た夕焼けを思い出して、綺麗だと思った。この時の僕は、まだ上司を信じていた。彼が心配になって振り向こうとした時、ぐるりと世界が回る。僕は操り主を失った人形のように──── その場へと崩れ落ちた。
「で、どうするのコイツ」
女は拘束されていた腕を摩りながら男へと問うた。
「コイツにはもう一働きしてもらうさ」
男は鈍色のアタッシュケ
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