第十六話 〜彼女たちのお話 -ティーダ・ランスターの章-【暁 Ver】
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ってデー」
ティアナは何かを言いかけると、頬を染めて俯いてしまう。ティーダはそんなティアナの様子を見て首を捻ったが、取り敢えず笑っておく事にした。暫く俯いていたティアナは頬を染めたままの顔を上げると、ぷいとばかりにそっぽを向く。
「に、兄さんが、どうしてもって言うのなら、つ、付き合ってあげてもいい……」
ティーダは最初きょとりとした表情を浮かべていたが、人の良さそうな顔を笑顔で崩した。
「うん、どうしても一緒に行きたいな。僕は」
それを聞いて蚊の鳴くような声で返事をしたティアナを見てティーダは益々、相貌を崩した。
首都クラナガンにある中央公園。休日ではないのでそれほど人は多くないが、ちらほらと親子連れや恋人同士が見受けられる。その公園にあるベンチにティアナは座っていた。目の前には大きな紙袋が三つ。少々買いすぎたかも知れないとティアナは反省していた。久しぶりに兄と出かけられて彼女は浮かれていた。兄が執務官になろうとしている理由も何となく気付いてはいた。だが、それを口に出す事はなかった。それはティーダがティアナを大事に思っている証拠だ。ティアナにしてみれば大好きな兄を独占出来ているような優越感だった。
物心ついた時には既に両親はなく。学校へ通わずに自宅学習していた彼女にとって、身近な異性と言えば兄しかいなかった。ティアナにとってティーダは親であり、兄であり、そして異性であった。年頃の少女が陥りやすい勘違いではあるが、今の彼女にはそれに気付くだけの人生経験が圧倒的に、足りていなかった。だが、今はそれで良いだろう。いずれ──── 嫌でも気付く事になるのだから。
件の兄は最近オープンしたアイスクリーム店へアイスを購入するべく、使いっ走りをさせられていた。ティアナが購入したお気に入りのブラウスを確認しようと紙袋へ手を伸ばした時、遠くから男性の声が聞こえてきた。
「──ナ? 一体どこからぱくって……いや、拾ってきたんですか。……いえ、それは落ちていたのではなく、飾っていたんです、店先に。良い子ですから、返しに行きましょう。私も一緒に行って謝りますから、ね? って言うか、よくここまで持ってきましたね、それ」
ティアナは何だか面白そうな事になっているような会話の主を確かめようとしたが、待ち人の優しい声にそれは中断された。
「ごめんね、待たせちゃって。オープンしたばかりでかなり評判になってるんだね、驚いたよ。ミント&クッキーと、ブルーベリーバナナ。どっちがいい? 季節限定らしいよ」
ティアナは少しだけ迷うと、ブルーベリーバナナを受け取った。フローズンヨーグルトの冷たさと、果実の自然な甘さが喉を潤していく。一通り喉が潤ったところで、ティアナは先ほどから気になっていた疑問を兄へと
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