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空を駆ける姫御子
第十六話 〜彼女たちのお話 -ティーダ・ランスターの章-【暁 Ver】
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出来ていた。ティアナと呼ばれた少女はそんな視線も何処吹く風で、朝食のサラダへフォークを突き刺した。

「酷いなぁ、じゃないでしょ。いつまでも起きない兄さんが悪いの。どうせ遅くまで勉強をしてたんでしょ? 執務官を目指すのも結構だけど、体を壊しては元も子もないのよ?」

 妹のにべもない言葉にティーダは肩を落とす。彼女は現在九歳。もうすぐ十歳にはなるが、随分と大人びた子供になってしまった。両親はすでに他界しており、家の細かい事を彼女に任せてしまった所為かもしれない。それに勉強に関しては、ティアナの言う通りであるので言い返す事も出来なかった。

 執務官──── 事件捜査に関して高い介入力と権限を持ち、捜査に当たっている人員に対しての指揮権も持つ。事件捜査の専門職であり、高い権限を有するがその反面、法の専門知識や優れた判断力と、人員を纏められる能力も求められる故に非常に狭き門でもあった。稀少技能(レアスキル)持ちが優遇されるような制度もなく、コネや権力を持っている人間からの紹介なども門前払いである。そのような事を許してしまえば、質の悪い執務官が雨後の竹の子のように増えてしまうのは、火を見るよりも明らかだからだ。基本的に管理局は自分の首を自分で絞めるような真似はしない。

 ティーダの一等空尉という階級は決して収入が低いものではない。だが、執務官ともなれば桁が違うのだ。いつの世も需要が多く、成り手が少ない専門職は高給取りと相場が決まっている。収入が上がれば、生活水準が上がる。生活水準が上がれば、生活そのものが楽になるのは当たり前だ。ティアナという少女はどうやら魔導師を目指すらしく、ティーダから射撃の手ほどきを受けているほどだった。収入が上がれば、彼女を通わせられる魔法学校の選択肢も増える。自分よりも優秀な魔導師を付けてやる事も可能かも知れない。……女性限定ではあるが。兄として彼女に出来るだけの事を。そう思う事は決して間違いではないだろう。

 己の敗戦をいち早く察知したティーダは、直ぐさま作戦を切り替える。微妙に役立ちそうで役に立たない能力だ。

「その、ね。偶には、クラナガン(首都)まで遠出するというのはどうだろう?」

 それを聞いたティアナは首を片方へ傾ける。左右で結わえている髪がそれにつられてひょこりと揺れた。

「……買い物に行くだけなのにクラナガンまでだなんて交通費が勿体無い。買い物なら地元(エルセア)で十分よ」

 いつの間にか所帯じみてしまった妹に苦笑を浮かべながら、ティーダは何とか勝利を納めるべく言葉を続ける。

「うん。唯の買い物ってわけじゃなくてね。せっかく明日まで休みだし、家でごろごろするのも魅力的だけど、偶には食事して映画でも見て……何だったら一泊しても良いしね。どう、かな?」

「そ、それ
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