第二章 風のアルビオン
第四話 最後の夜会
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士郎たちを乗せた軍艦“イーグル”号は、浮遊大陸アルビオンのジグザグした海岸線を雲に隠れるようにして航海していた。
三時間ばかり進むと、大陸から突き出た岬が見え、その突端には高い城がそびえていた。
ウェールズは後甲板に立った士郎たちに、あれがニューカッスルの城だと説明した。しかし、“イーグル”号は真っ直ぐにニューカッスルには向かわず、大陸の下に潜り込むような進路を取る。
「なぜ、下に潜るのですか?」
ルイズの疑問にウェールズは城の遥か上空を指差す。
指先の延長上、遠く離れた岬の突端の上から、巨大な船が降下してくる途中であった。慎重に雲中を航海してきたので、向こうには“イーグル”号は雲に隠れて見えていないようであった。
「叛徒どもの艦だ」
巨大としか形容出来ない、禍々しい巨艦であった。長さは“イーグル”号の優に二倍はあるだろう。帆を何枚もはためかせ、ゆるゆると降下したかた思うと、ニューカッスルの城めがけて並んだ砲門を一斉に開いた。ドドドドンッ、とまるで雪崩の様な斉射の振動が“イーグル”号まで伝わってくる。砲弾は城に着弾し、城壁を砕き、小さな火炎を発生させた。
「かつての本国艦隊旗艦“ロイヤル・ソヴリン”号だ、叛徒どもが手中におさめてからは、“レキシントン”と名前を変えている。やつらが初めて我々から勝利をもぎ取った戦地の名だ。よほど名誉に感じているらしいな」
士郎は雲の切れ目に遠く覗く巨大戦艦を見つめた。無数の大砲が舷側から突き出て、艦上にはドラゴンが舞っている。
「備砲は両舷合わせ百八門。おまけに竜騎兵まで積んでいる。あの艦の反乱から、全てが始まった。因縁の艦さ。さて、我々の船はあんな化け物を相手にできるわけもないので、雲中を通り、大陸の下からニューカッスルに近づく。そこに我々しか知らない秘密の港があるのだ」
雲中を通り、大陸の下に出ると、辺りは真っ暗になった。大陸が頭上にあるため、日が差さないのであった。おまけに雲の中である。視界がゼロに等しく、簡単に頭上の大陸に座礁する危険があるため、反乱軍の軍艦は大陸の下には決して近づかないのだ、とウェールズが語った。ひんやりとした、湿気を含んだ冷たい空気が、士郎たちの頬をなぶる。
「地形図を頼りに、測量と魔法の明かりだけで航海することは、王立空軍の航海士にとっては、なに、造作もないことなのだが……空を知らない、無粋者の貴族派には無理な話しさ」
そう言ってウェールズは笑った。
しばらく航行すると、頭上に黒々と穴が開いている部分に出た。マストに灯した魔法のあかりの中、直径三百メイルほどの穴が、ぽっかりと開いている様は壮観だ。
「一時停止」
「一時停止、アイ・サー」
掌帆手が命令を復唱する。ウェールズの
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