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剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
第四話 最後の夜会
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にはこの日のためにとって置かれた、様々なごちそうが並んでいる。
 士郎は壁に寄りかかりながら、この華やかなパーティーを見つめていると、ワルドがワインの入ったグラスを、二つ持って近寄ってきた。
 
「終わりだからこそ、ああも明るく振舞っているのだよ」
 
 そう言って、片方の手に持っていたワインを、士郎に手渡した。 
 
「ああ……そう考えると、寂しく感じるものだな……」

 ウェールズが現れると、貴婦人たちの間から、歓声がとんだ。若く、凛々しい王子はどこでも人気者のようだった。彼は玉座に近づくと、父王になにか耳打ちした。
 ジェームズ一世は、すっくと立ち上がろうとした、しかし、かなりの年であるらしく、よろけて倒れそうになった。ホールのあちこちから、屈託のない失笑が漏れる。
 
「陛下! お倒れになるのはまだ早いですぞ!」
「そうですとも! せめて明日までは、お立ちになってもらわねば我々が困る!」

 ジェームズ一世は、そんな軽口に気分を害した風もなく、にかっと人懐っこい笑みを浮かべた。

「あいや、おのおのがた。座っていてちと足が痺れただけじゃ」
 
 ウェールズが、父王に寄り添うようにして立ち、その体を支えた。陛下がこほんと軽く咳をすると、ホールの貴族、貴婦人たちが一斉に直立した。

「諸君。忠勇なる臣下の諸君に告げる。いよいよ明日、このニューカッスルの城に立てこもった我ら王軍に反乱軍“レコン・キスタ”の総攻撃が行われる。この無能な王に、諸君らはよく従い、良く戦ってくれた。しかしながら、明日の戦いはこれはもう、戦いではない。おそらく一方的な虐殺となるであろう。朕は忠勇な諸君らが、傷つき、倒れるのを見るに忍びない」

 老いたる王は、ごほごほと咳をすると、再び言葉を続けた。

「従って、朕は諸君らに暇を与える。長年、よくぞこの王に付き従ってくれた。厚く礼を述べるぞ。明日の朝、巡洋艦“イーグル”号が、女子供を乗せてここを離れる。諸君らもこの艦に乗り、この忌まわしき大陸を離れるがよい」
 
 しかし、誰も返事をしない。一人の貴族が、大声で王に告げた。

「陛下! 我らはただ一つの命令をお待ちしております! 『全軍前へ! 全軍前へ! 全軍前へ!』今宵、うまい酒の所為で、いささか耳が遠くなっております! はて、それ以外の命令が、耳に届きませぬ!」

 その勇ましい言葉に、集まった全員が頷いた。

「おやおや! 今の陛下のお言葉は、なにやら異国の呟きに聞こえたぞ?」
「朦碌するには早いですぞ! 陛下!」

 老王は目頭を拭い、ばかものどもめ……、と短く呟くと、杖を掲げた。

「よかろう! しからばこの王に続くがよい! さて、諸君! 今宵は良き日である! 重なりし月は、始祖からの祝福の調べである
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