暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
外れた世界へ
二章 「旅立ち」
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矢理にでも飛ばしてたわ」
おいおい、この師弟は二人揃ってそうなのか。
「何よ、反対して欲しかった? 言っとくけど、士郎の為なんだからね」
「俺の為……か。毎回、なにやってんだろうな、俺」
今に始まった事じゃないでしょ、と遠坂。

「それより士郎。あんた、自分の体の事は本当に無頓着なんだから、ちゃんと管理しなさいよ。これからは私も居なくなるんだから」
遠坂が居なくなる………か。
もう、逢えなくなるんだよな。

「了解。努力はしておくよ」





それから、遠坂と少し話をした。
これまでの事、家の事、皆の事。
遠坂なら上手くやってくれると思うけど、一応、ケジメの様なものかな。
「後は頼むよ、遠坂。家主としては失格かもしれないけどな」
「分かってるわよ。あんたこそ、精々頑張りなさい」

話を終えた所、調度良くゼルレッチの確認は終わったようだ。
「不備はなかった様だ。では準備は良いか、衛宮士郎」
「あぁ、頼む」
陣に移動する。
「まぁ、貴様は特に何をするという事もない。とりあえず中央に立つだけで良い」
そう言われて魔法陣の中心に俺は立つ。
すると魔法陣は眩いばかりの光を放ち始めた。
ついつい、身を強張らせてしまう。
「第二魔法は言うならば『多世界解釈』だ。そこで、現在・過去・未来、あらゆる可能性上の衛宮士郎の情報を貴様に付与する。貴様の魔術では情報は即ち戦力に直結するのだろう? 餞別の様な物だ、遠慮なく受け取れ」

足元から体が消えていくのを感じる。

「ありがとう、助かる」
そうゼルレッチに礼を言って、遠坂の方を見た。
別れに涙は必要ない―――、そうだな遠坂。

体はもう半分以上が消えている、だけど最期にこれだけは言わないと

「大丈夫だよ遠坂、俺もこれから頑張っていくから」
そう言うと、遠坂は何かを言った。
「士郎、―――――よ」
もう声は聞こえなかったが、俺にははっきりと遠坂が言った事が聞こえた気がした。










「あのバカ……。アイツと同じ事を言って……」
結局、士郎は最期までアイツと同じだった。
いや、違う。
結果は同じだったかもしれないけど、士郎は後悔なんてしなかった。
その生き方はこれからも変わることはないんだろう。
とにかく、私はアイツとの約束を守ったのだ。
「アーチャー、あいつはちゃんと面倒みたわよ」

誰ともなしにそう言った後、彼女の頬には一筋の涙が流れていた。














こうして、衛宮士郎の新たな世界での戦いの火蓋は切って落とされた。
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