第一章 土くれのフーケ
エピローグ 二人っきりの舞踏会
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んと、後が怖いぞ。それじゃ、わしはこれで失礼するよ。ミス・ロングビル。詳しい話は今度にしようかの。今は休んでおきなさい」
そう言って保健室から出ていくオスマン氏を、士郎は苦笑いをしながら見届けると、ロングビルに向き直り話しかけた。
「さて、俺も行くとするか。ミス・ロングビル、言われたように、ゆっくり休んでいろ」
そう言って、士郎が保健室を出ていこうとしたが―――ロングビルに外套を掴まれてしまい、動けなくなってしまった。
「ん? ミス・ロングビル、どうかしたか?」
「あっ……あの、シロウ……今から、その……舞踏会に行くのかい」
上目遣いで聞いてくるロングビルに、士郎は頷いて応えた。
「ああ、どうもルイズたちが探しているようだからな。無視すれば後が怖いからな。少し顔を出してくる」
保健室から出ようとする士郎を、ロングビルはまたも外套を掴んで呼び止めた。
「―――ちょ、待ってくれよシロウ。その前に少しだけあたしに付き合ってもらえないかい?」
「ん? ああ、別に構わないが……何に付き合えばいいんだ?」
士郎の了解を得ると、ロングビルは嬉しげに笑い、ベッドから降りた。ベッドから下りたロングビルは、士郎の目の前に立つと、スカートの裾を軽く持ち上げ、恭しく頭を下げた。
「―――ミスタ・シロウ、良ければわたくしと一曲踊っていただけませんか」
洗練された淑女からの誘いに一瞬目を見開いた士郎だが、直ぐに微かに口元に笑みを浮かべると、手を胸に当て恭しく頭を下げた。
「喜んで」
二人が近付き、それぞれの体に腕を回すと、ロングビルが頬を染めながら恥ずかしそうに自身の服を見下ろした。ロングビルの今着ている服は、お世辞にも綺麗とは言えない汚れた服装だった。
「こんな服で、恥ずかしいんだけどね」
ロングビルのその言葉に、士郎はベッドのシーツを素早く引き抜くと、それをロングビルの身体に巻きつけた。ロングビルの身体を包む白く清潔なシーツは、まるでウエディングドレスのようで、窓から差し込む月の光を受け、淡く白い輝きを見せる。
「―――ぁ」
「まあ、その……駄目か?」
「そんなっ……嬉しい」
士郎に服を着せられたロングビルは、頬をさらに赤くしながら笑った。
「それはよかった」
「それじゃ」
「ああ、踊ろう」
窓から差し込む月明かりだけをライトに、微かに窓から聞こえる音楽をBGMにして、二人の体は右に左にとゆくりと動き出した。
「シロウ」
「何だ、ロング……」
急に士郎を呼んだロングビルは、それに応えようとした士郎の言葉を自身の指で士郎の口を塞ぐことで遮り、士郎の胸に顔を埋めながら恥ずかしそうに囁いた。
「―――マチルダ。
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