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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
エピローグ 二人っきりの舞踏会
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 ―――マチルダ、あの子のことを頼むぞ……

 ―――お父様……

 ―――すまない、このようなことになって……

 ―――そんな……

 ―――お前に苦労だけ背をわせてしまった私を憎んでくれ……

 ―――憎めませんっ……

 ―――私に、こんなことを言う資格はないが、マチルダ……

 ―――お父様……

 ―――幸せになってくれ……



「お父様っ!」

 ロングビルが目を覚ますと、そこは、見覚えがある場所だった。

「ここは、保健室?」

 周囲を見渡し呆然と呟いたロングビルは、ベッドの上にいる自分の身体を見下ろした。

「……あたしは死んだはずじゃ」
「―――死んださ」


 突然聞こえてきた声に慌て振り向くと、夜の闇に紛れるように、士郎が壁に寄りかかっていた。
 壁から身を放した士郎は、ベッドの上にいるロングビルに向かって近づいて行く。
 ロングビルは身構えることを忘れ、近づく士郎を呆然と見ている。

「あの場所で“土くれのフーケ”は死んだ。今ここにいるのは、魔法学院学長の秘書であるロングビルだ」

 ロングビルは、今だに信じられないような顔をして言った。

「どう、して」
「どうして助けたか、か?」

 ロングビルの言葉に続けるように言った士郎は、軽く微笑むと、ロングビルの頭に手を置くと、子供にそうするように優しく撫で始めた。

「―――あ……」
「借りがあるからな……」
「え、借り? っわぷっ」

 優しく撫でていた手付きを乱暴にかき混ぜるような手つきに変えた士郎は、一通り頭を掻き回すと、ロングビルから離れていく。

「か、借りって、一体何のことを?」
「俺の体面のため、本を持たせてくれただろ」
「なっ! そ、そんなことで……」

 あまりの事に、ロングビルは呆然としている。
 士郎はそんな様子を見て笑う。

「それに、オスマン氏からも頼まれたからな」
「えっ、オールド・オスマンから……?」

 ロングビルが、疑問の声を上げると、士郎は軽く頷くと言った。

「オールド・オスマンは、お前の正体を知っていた。それだけでなく、君の過去もな」
「オールド・オスマンが、何で……」
「詳しくは聞いてないが、昔、君の父親と懇意にしていたらしいな。子供の頃のお前に会っていたみたいだそうだ」
「そんな……」

 ロングビルが信じられないと言う様に呟くと、士郎は続けて言った。

「だから君がフーケだと知っていながらも、秘書として雇っていたそうだ」
「オールド・オスマン……」

 ロングビルが涙ぐみながら呟くのを聞き、士郎はこれからのことについて話し始めた。

「まあ、それでこれからのことなんだ
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