第十五話 〜暗雲来たりて【暁 Ver】
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を掠めた。
──── ……ライオンに寄生して殺すようなむしは、いない。
教官の話は全くの嘘だったのかと考えたが、すぐに思考から追い出した。今から思えば、唐突にあんな話をした理由も、ティアナにはわからなかった。教官にとっては其の場凌ぎの、戯れ言だったのかも知れない。だが、ティアナにはどうしてもそれが、頭の隅に引っかかっているのだった。
いつものように思考の海へ深く潜り込もうとしたティアナの意識を浮上させたのは、端末から聞こえるコール音。額に少しだけ貼り付いた髪を払いながらコールに応えると、スクリーンの中にいたのは。満面の笑みを浮かべながら頬に餡子を付けたスバルと、その後ろで今正にショートケーキのイチゴを攻略せんとしている、アスナの姿だった。
──── 雨、か
雨景色。彼女は自室の窓からしとどに濡れる風景を、窓際に頬杖をつきながら見ていた。今日もいつものように事件捜査へ向かう予定ではあったが、八神はやてに止められたのだった。彼女曰く、働き過ぎだと。頻繁に部屋を訪れる高町なのはも、今日は一度も姿を見せていなかった。最初はなのはと同室の予定だったが、とある理由で別室とした。謂れなき中傷など無視しても良かったが、エリオとキャロの事を考えれば、これで良かったと彼女は思っている。雨音しか聞こえない静かな空間にいると改めて考えることが多いことを思い知らされるようだった。
自分の事。はやてから聞かされた近い将来現実に起こるかも知れない事と、六課の存在理由。そして……頻発している研究施設を狙った襲撃事件。彼女が休みを削ってまで捜査に没頭していたのは、襲撃事件の為であり、感が彼女へと囁くのだ。あの男の影を。
彼女は既に割り切ってもいたし、自分という存在を認めてもいた。だが、エリオは。自分という存在を知った時、彼がどれほど苦しんだか──── 彼女は音を鳴らして奥歯を噛みしめた。彼女とて理解している。技術と研究成果は既に出てしまっているのだ。男を捕まえたところで、エリオのような存在が、もう生まれてこないとは言い切れない。だが、彼女はもう決して止まることは出来ないのだから。もう一度窓の外を見る。
考える事は多い──── 雨に沐い風に櫛る。そのような苦労をしろと言う事か。ならば、やってみせようではないか。彼女が思いを新たにした時。何度聞いても慣れない、恐らくこれからも慣れる事は無いであろう音が、彼女の形の良い小さな耳へと届けられる。緊急招集──── 雨は。まだ止まない。
ミーティングルーム。六課のメンバー。八神はやての険しい表情。事件の概要。数人の女。能力──── 騒めき。
「今回の事件で五件目。加え
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