第十五話 〜暗雲来たりて【暁 Ver】
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うかなって。軽く」
「……スパークリング?」
「惜しい。それだと、弾けちゃうよ。そういうボケはティアにやってあげて。……どう?」
「……やる」
以上のような経緯で始まったのであるが、いざ始めてみると軽くどころの話では無かった。スバルの疾風迅雷と言っても過言では無い初動で、アスナは瞬く間に懐に潜り込まれ、対処しようと思った時には、投げ飛ばされていた。スバル・ナカジマという少女を決して侮っていたわけでは無い。だが、アスナは脅威とも感じていなかったらしい。アスナはそんな自分を嗤い、叱咤しつつ空を両手で掴む。重力に逆らい横っ飛びしている体に急制動を掛ける。鉄棒宜しく、くるりと回ると地上へ────
──── 着地。瞬。動。肉薄。笑う。拳打。連撃──── 鳴動。
水月を中心に拳の弾幕を浴びせられ、スバルは防御もままならず吹き飛ぶ。満足な受け身も出来ずに、蹴られたサッカーボールの如く二度、三度と地上をバウンドしながら──── スバルは動かなくなった。こうして。スバルとアスナの戦いは終わりを告げたのであった。
「終わりを告げたのであった、じゃないよ」
高町なのはが、両手を腰に当て仁王立ちしながらアスナを睨んでいる。どうやら、怒っているらしい。
「……次回へ続くのほうがよかったですか」
「そう言うことを、言ってるんじゃないの。……何でジャンプしてるの?」
「……お金なら持ってません」
「カツアゲじゃないよっ。それと怒っているのは、カルシウムが足りない所為じゃないよ。だから煮干しは、しまってなの」
エリオはそんな光景を諦めたかのような目で見ていた。怒りのあまり語尾が少々怪しくなり始めた高町なのはが、桐生アスナの差し出した煮干しをぺしりとばかりに叩く。くるくると宙を舞う煮干し。ついと下を見ると、くるくると目を回しているスバル・ナカジマの頬を、キャロが木の枝で突いている。
エリオはそんな光景を見ながら肩を落とした。ティアナがいれば、この事態を息をするように収拾してくれるだろう。彼女の姿を探すように視線を彷徨わせるが、目に入ってくるのは気絶した少女と、木の枝は飽きたのか直接鼻を摘みだした幼女と、語尾が退行しているような気がする女性と、騒動の元凶のような気がするが、他人事のような顔をしている乙女だけであった。事態を収める事を無理だと判断した少年は、青空を見上げ──── 流れる雲を見つめる事に決めた。
────── くるりくるり
相手先へ繋がるまでの待ち時間を示す六課の部隊章が、スクリーンの中で回る。こつりこつり。自分でも綺麗に手入れされていると思う爪先がデスクを叩く。手持ち無沙汰を誤魔化すように部屋へ戻る途中に自販機で購入した紅茶を啜る。不味い。雑巾を絞
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