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《SWORD ART ONLINE》〜月白の暴君と濃鼠の友達〜
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く考え込んだ後、少女は刃をしまい、てくてくと帰路についた。
木々が少女の後ろ髪を引くようにさわさわと囁いた。咲き乱れる花や植物を避けつつ、慎重に歩を進める彼女に、鱗粉のような光がまとわりつく。
それを振り払い、目を擦りながら、少女はちょろちょろと流れる清水をまたいだ。次に湿った岩の上を危なっかしげに歩く。
向こう岸についたその後も、彼女は歩き続けた。
白い砂利道を通る。
絨毯のような苔を踏んづける。
藪にぽっかりと空いたトンネルをくぐり抜ける。
ーーようやく視界が晴れて、街道に戻ってきた彼女を出迎えたのは、かすかに白んできた東の空だった。この世界の夜が明ける。
彼女はそれと分かるほどに顔をしかめた。睡眠時間がなくなってしまったのもそうだが、眩しい太陽光は、少女が苦手とするものの一つだったのだ。
「・・・・・・しまった。早く屋敷に帰ろう」
ポン、と驚くような性急さで日傘を広げた彼女は、それに隠れるようにして道を急いだ。まるで丸くておかしな生き物が、坂を転がっているようだった。
「帰ったら齋藤に風呂の準備をさせよう。うん、それがいい。・・・・・・それでもって着替えは伊藤で、朝食は蒲生だ。それから・・・・・・」
不意に少女の歩みが止まった。真っ白い掌がぎゅっと握りしめられる。
小さい、本当に小さい声で呟いた。
「・・・・・・そうか。帰っても、誰もいないんだったな」
肩を落とした彼女は、いつもより小柄に見えた。折れてしまいそうに細い体が、ちょっと寒そうに震えた。俯いているせいで表情はよく見えない。
しかし、次の瞬間、何かを思い出したかのようにあっと顔を上げた少女は、良いことを思いついた、とばかりに満面の笑みを浮かべた。
「そうだ、あいつがいた。バカでドジのダメ男が! あいつに全部やらせよう。私はそれまで寝ながら待てばいい」
散々その人間を罵りながらも、どこか嬉しそうなのは何故だろう。ともかく少女は、別人とも思える軽い足取りで再び歩き始めた。そんな彼女を美しい朝焼けが照らし出す。周囲の緑も鮮やかに輝き、生命の息吹を伝えてくるようだった。森のどこかで眠りから覚めた小鳥が飛び立った。文句なしの晴天だ。
「ま、まぶしい」
悲鳴のような声を残し、日傘のお化けは、そそくさと朝露で煌めく街道に消えていった。
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