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《SWORD ART ONLINE》〜月白の暴君と濃鼠の友達〜
プロローグ
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動いたのは《ホブゴブリン》だった。

足元に咲いた花を踏み潰し、突進してきた《ホブゴブリン》は、目測で数メートルの距離まで肉薄するなり、少女に覆い被さるようにして飛びかかって来た。斧がギラリと不吉に輝く。

「0点だ。粗忽者」

果たして相手は、彼女の言葉を理解することができたのだろうか。

少女にとって丸わかりだった斧の軌道は、当然のように何も捕らえることがきなかった。ぱっと体を右に倒して攻撃を躱した彼女は、《ホブゴブリン》とのすれ違い様に、刃をその脇の下へと滑り込ませた。鎧の防御力が及ばない急所だ。

少女の手に伝わる不快な感触。赤い閃光が血のように飛び散った。ゴトリと何かが地面に落下して、ポリゴン片となり消滅する。《ホブゴブリン》の腕だ。

ぐ・ぎぃ・あ・あ・あ・あ・あ・!

腕を切り落とされた《ホブゴブリン》の悲鳴が、森の静寂を破り、木々がざわざわと揺れた。しかし、その絶叫も長くは続かなかった。少女の持つ刃が稲妻のように返ってきて、怪物の首を見事に切り落としたからだ。

すぱん!

呆気ないほど簡単に《ホブゴブリン》の首がころころと転がる。ちょうど少女から見える位置で止まったそれは、顔に苦悶の表情を張り付かせていた。てらてらと光る涎が、半開きになった口から零れている。

その凄惨さに少女はぎゅっと目を瞑った。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

しばらくして恐る恐る目を開けた彼女は、生首が消滅していることにほっと安堵の息をつく。自分で切り落としておきながら、実は相当苦手だったらしい。キョロキョロと辺りを見回し、自らの醜態を見られていない事を確認すると、拗ねたように口を開いた。

「精巧過ぎるのも問題だ・・・・・・。ゲームならもっとこう・・・・・・しかるべき箇所を作り込め。お前のやる事はいつもそうだ、茅場晶彦!」

この世界を”作った”科学者に対して、少女はぶちぶちと文句を言った。無論、この場には返事をする者も、失笑を漏らす者もいなかった。絵本の中の風景のように、美しくも冷たい静寂があるだけだ。

少女はほんのちょっとだけ、切なそうに顔を曇らせた。独りに慣れているとはいえ、決して寂しくないわけではない。それからふっと溜め息をついた少女は、自らを戒めるかのように表情を改めた。もう先ほどの様子は幻のようにかき消えている。

周囲からモンスターの気配も消えていた。ぽつんと一人で立ちつくした少女は、なぜか頼りなさげにふらふらしていた。眠くなったのだろう。彼女自身も、十二時を回ってから、どれほど時間が経ったか覚えていなかった。

少女は一つ大きな欠伸をした。目から真珠色の雫がぽろりと零れる。はっとして頬をつねり、眠気を追い払おうとするが、僅か数秒で負け戦だと悟ったらしい。しばら
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