暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外編
再開のダイシー・カフェ
[1/5]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 それは、カラリとよく晴れた日だった。

 「はぁ……」

 イラつくくらいに青々とした空を仰ぎ見ながら、俺は深々と一つ溜め息をつく。
 別にその行為にさしたる理由はない。

 今日もまた、何不自由ない一日だ。牡丹さんの作った栄養管理食を食わされ(もういい加減に体重も体調もあの春先の悲惨な状態からある程度は回復しているのだが……)、仕事でとあるVRMMO(全く、フリーライターってのも忙しい仕事だ)にダイブし、その原稿を書きあげているという、それなりに忙しく、それなりに楽しい一日。溜め息をつく要素など何もない。ない、はず。

 (……はず、なんだけどなぁ……)

 それでも、文字を打ち込みながら眉間に皺が寄るのが自覚できる。無理やりにでもあえて理由をあげるならば、それはやはり空がいやに晴れているせいだろう。どちらかといえば曇り空や夜が好きな俺としては、この煌々と照りつける太陽はどうにもつらい。日に日に長くなる昼間は、ひと月前はもう日暮れ時だったような今の時間までも浸食している。

 喫茶店の中なので外の日差しを直接感じる訳ではないが、窓越しに見るだけでなんとなく暑苦しい様な、騒がしい様な、妙な気分になる。そのせいか、キーボードを打つ手も、やけに滞る。別の世界で例えるなら、まるでチビソラ達に邪魔されてるみたいだ。

 (…そろそろ帰るか……)

 原稿が一段落したところで、心の中で呟く。
 気付けば既に喫茶店にコーヒーだけで三時間以上居座っている。

 勿論この『ダイシー・カフェ』の店主とはその程度のことを気にするような間柄では無い。無い、のだが、流石に喫茶店兼バーのような位置づけであるこの店の掻き入れ時である夕食時まで一人で四人掛けテーブル席を占領するのも申し訳ない。

 (お……)

 カラン、といい音をさせて店のドアが開き、高校生くらいと見える少女が二人入ってくる。それを見ると同時に、俺は仕事用の端末を鞄に閉まって立ち上がった。この狭い店にテーブルは二つ。一つは空けておくほうがいいだろう。

 「……ごちそうさま」

 サングラスをかけて、いつもどおりに代金をテーブルに置いて低く一言告げる。それだけで十分なくらいには、この店はいきつけだ。そしていつもなら店主はそれに対しても無愛想でビジネスライクな返答を返す……のが、普通なのだが。

 「毎度あり、……『シド』」
 「……?」

 見事な禿頭の黒人店主が、滑らかなバリトンで告げるセリフは、いつものそれにはないはずの俺の「名前(アバターネーム)」が後ろについていた。予想を裏切ったセリフに、俺の体が一瞬止まる。

 その瞬間。

 「……っ!?」
 「シド?」
 「シド、さん?」

 テーブルに座ろうとしていた二人の女学生の訝しげ
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ