暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン アスカとキリカの物語
アインクラッド編
探偵&助手、再始動
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 雑木林にポツンと置かれたブッシュの中、グリセルダの墓碑がある小高い丘の方向を見据えている一人の男。ゆったりめの革製の装備やつばの広い帽子はともかく、長身で、更にこの世界ではめずらしく眼鏡をかけている――この世界で視力矯正なんてする必要は無いからだ――その男は、シュミットたちから大まかな特徴を聞いていた《黄金林檎》のメンバーであり、今回の事件における最重要案件であったであろう貫通継続ダメージ特化型武器製作者にして半年前に殺されたグリセルダの夫であった――グリムロック。
 確定するに足る情報が揃っている訳ではないが、今回の事件に関係ない人間がこんな辺鄙な階層のフィールドでモンスターから隠れるためでもなく隠蔽スキルを使う必要などないし……何より、その黒い額縁眼鏡の奥に光る無表情ながら怪しげな光を放つ眼光が、彼であると直感させた。

「……っ!」

 隠蔽スキルが看過されたことに気付いたのであろう。その男がこちらへと視線を移す。微かに息を飲む気配。

 だが、それは《閃光》と呼ばれるアスカに対して致命的なまでに遅かった。
 
 彼女を……キリトを待たせているんだ。悪いが引きずってでも連れていく。

 決意を固め、アスカは友人である鍛冶屋リズベットが鍛え上げてくれた、最前線でもトップクラスの性能を誇る《ランベントライト》の白銀の刀身を引き抜き、地を踏み砕かんばかりに足を踏み出した――





「シュミットさんはしばらくして攻略組に復帰、ヨルコさんとカインズさんも中層で攻略組サポートギルドに加盟するみたいだ」

「グリムロックも黒鉄宮の監獄エリアに投獄したってな。まぁ、こっちの世界じゃ罪を償わせるって言っても、それが限界か……」

「彼らが殺人に手を染めるような真似をしなかっただけで十分だよ。それに俺達は所詮、部外者だから」

 ――なんて努力の甲斐あり、無事に圏内事件の全てを解決した数日後。
 最初に圏内における殺人の危険性を情報屋に伝えていた大手ギルドのプレイヤーの元に訪れ、今回の事件――無論、《黄金林檎》の込み入った事情は避けて、だが――のカラクリを全て伝え終わった後、アスカとキリトは転移門広場近くのレストランで向かい合っていた。
 詳細を伝えるのに数日の空白が生まれたのは……実はただのうっかり、正確には互いに省略した部分の読み取りに齟齬があったからだ。
 カインズたちに事件後のことを全て任せたつもりだったのだが、彼らがグリムロックの処罰の決定以外、何もしていないことに気付いたのは、今しがた二人が眺めている報告書が届いた昨日の晩。
 「あんなカッコよく『後の事は俺たちに任せてくれないか?』なんて言うもんだから、後始末まで全部やってくれるのかと思ってたのに」というのが、アスカの眼前の少女の言だが、アスカとキ
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