第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
シカマル
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……リリン……
「……な、なんだ……!?」
体から力が抜けた。地面に跪いたシカマルの耳を、尚もその音はかき乱す。
――リリン、リン……リリリン……
呆然として自分を見上げるシカマルに、キンはくすっと笑い声をこぼした。
「私の鈴の音を聞いたやつはね、皆そうなるのさ」
――リリリン、リリリン、リリリリリリリ……
鈴の音はけたたましいまでに鳴り響いている。
「この特殊な鈴の音の振動が、鼓膜から直接脳へと働きかける。そしたらお前に、幻覚を見せるのさ」
――リリリン、リリン、リリリリリリリン
「――ッ!」
「無駄だ!」
咄嗟に耳を押さえるも、しかしその鈴の音は頭のなかをガンガンと打ち付けるように反響している。シカマルが今までに聞いた一番うるさい鈴の音だった。
――リリン、リリリリ、リリリリリリリ
幻覚にかかってしまったのだろう。何人ものキンが目の前に現れた。彼女は分身などは一切使っていないはずなのに。目の前がくらくらして、頭が痛かった。「そんなことじゃ私の鈴の音を防ぐことは出来ない」、一人のキンがそう言うと、残りのキンが「できない」「できない」「できない」と唱和した。反響する鈴の音に吐き気すら覚える。
「っくそお、どれだ? どれが本物だ……!?」
「「手も足もでないだろう? 一縷の望みだったお前の影も、どこへ伸ばせばいいのか、わからない始末じゃね」」
――リリン……
キンの嘲る声が合唱する。何重にも重なって響いてくるその音に、シカマルは頭割れそうな思いだった。
「「さあ、ゆっくり料理してやるよ」」
「げえ……なんかやばっ、って」
咄嗟に片腕を持ち上げて体を庇った。その腕に千本が三本突き刺さる。身に纏った衣服に小さな血の染みが浮かんだ。
――リリン、リリリン、リリリリリ……
相変わらず鳴り止まない鈴の音がする。
「「今度は五本。次は七本。お前がハリネズミになるまで、続けてやるよ」」
「嘘つき女め」
シカマルは怪我した腕を庇いながら呟くように言った。
「最初に、直ぐ終わらせるって言ったじゃんか」
「「そうかい。痛みに耐えかねて楽になりたくなったかい。じゃあこれで終わりにしてやるよ、――とどめだ!」」
シカマルの顔が緊張した。そのシカマルに向かって千本を投擲しようとキンが構えたその瞬間、キンは自分の体が思い通りに動かなくなっていることに気づいた。
「――な、何!? かッ、体が……!」
キンの両腕がだらりと下がった。はあ、と溜息をつきながらシカマルが立ち上がる。先ほどまでの緊張した色はまったく見てとれない。
「ようやく影真似の術成功……」
「な、何を言ってるの。お前の影なんてどこにも」
幻術
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ