第十四話 〜彼女たちのお話 -桐生アスナの章-【暁 Ver】
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やがて一人──── 二人と席を立っていく。ティアナとスバルはその光景を見て、お互いに顔を見合わせると、くすりと笑った。律儀にも寮へと向かわず、こちらへ来たらしい。そして二人も、彼女達に続くべく歩き出す。心なしか──── 軽い足取りで。
沈み掛ける太陽を背にして、彼女が歩いてくる。いつものようにとてもラフな格好で。頭には黒の皮キャップ。黒のタンクトップに訓練用のカーゴパンツ。足には履き古したスニーカー。背中には頭陀袋を背負って。ティアナやスバルには、少し女の子らしくしろと言われているが、実践したことは殆ど無かった。
彼女へ向かってエリオとキャロが駆けだした。彼女に走り寄った二人が、何を言ったのかはわからない。毎日当たり前のように交わす挨拶だったのかも知れないし、そうじゃなかったのかも知れない。だが、二人と彼女の顔に浮かんでいるのは間違いなく、微笑み。あまり表情の変化がない彼女が、笑っているのは珍しい。
こうして──── 六課から数日ほど消えていた彼女が戻ってきたのである。それは同時に騒がしい日々も戻ってきた事と同義ではあるが、幸いにもそれを指摘するような無粋な人間はいなかった。エリオとキャロに手を繋がれながら、もう一つの家になりつつある居場所へ戻ってくる彼女を、皆は同じような笑顔で出迎えた。
〜彼女たちのお話 -桐生アスナの章- 了
──── ティアナ達の恩師である、ヨハン・ゲヌイトが消息を絶ったとの凶報が齎されたのは、この日から僅か数日後の事であった。
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