第十四話 〜彼女たちのお話 -桐生アスナの章-【暁 Ver】
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の件も……ほぼ司法取引のような処置だったと聞いている』
「だったら犯罪者でもなんでもないじゃないですか。少なくとも、この『世界』の『法』ではそうなりますね」
『些か、詭弁のような気もするが』
ボブの言葉に桐生は、笑う。
「私もそうだと思います。ですが、八神さん達を裁く材料も、人もいないわけですから。……十九歳にして、二等陸佐という地位。保有魔力は管理局の中でもトップクラス。一騎当千とも言える、守護騎士の皆さんまで。管理局に影響力が大きい方とのパイプもあると聞いています。……私には才能溢れる若者に嫉妬しているだけのようにしか思えませんがね」
その時。工房の雑多な空気を震わせるように奏でられたメロディー。どうやら夕食が出来たらしい。桐生は喫煙者である為、彼女には工房への出入りを禁じてある。……全くと言って良いほど守ってはくれていないが。あまり待たせてしまうとへそを曲げてしまうが、桐生は特に急ぐ樣子もなく椅子から立ち上がる。
『桐生もあるのかい? 誰かに嫉妬することが』
扉をくぐろうとしていた桐生は立ち止まり、ボブへ振り返る事無くこう答えた。
「──── そりゃぁ、人間ですからね」
その日──── ティアナ・ランスターは困惑していた。彼女に居候の世話を頼まれたのは良いが、蛙のぴょん吉はともかくとして、愉快なアリ軍団はどうやって世話をすれば良いのか、わからなかった。念を押すようにして頼んでくる彼女へ曖昧に頷いたのが、運の尽きだった。
今日も彼女の部屋を訪れたが、昨日とは様子が違っている部分があった。部屋に入るとすぐ目に入る、普段は端末しか置かれていない無味簡素なデスクの上が──── 少し賑やかになっていた。
ティアナは新手のいじめかと思いながらデスクへと近づいていく。小さな鉢植えには控えめな仙人掌が植えられていた。蕾が付いているところをみると、幾日もしないうちに花が咲くのかも知れない。
大きな虫籠には目が合ったら殺られそうなカブトムシがいた。誰が捕まえてきたのかは知らないが、カブトムシと言う名前の語尾が、疑問系になってしまいそうなほど大きい。彼女は大喜びだろう。
ティアナは一通り検分し終えると、暫し考える。やがて水槽へと近づき、今日も脳天気な顔をしている蛙の顔を見て、なぜかスバルの顔を思い出す。吹き出しそうになるのを何とか堪えながら餌のコオロギを、ぞんざいに放り込んだ。そして──── 彼女が六課に来た頃の心配は完全に杞憂に終わったのを感じると、いつもより少しだけ賑やかな部屋を後にした。
食堂に於て年頃の少女らしい歓談に花を咲かせている彼女達を、壁により掛かりながら一人の男が見ていた。男にとっては群れるなど我慢
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