第十四話 〜彼女たちのお話 -桐生アスナの章-【暁 Ver】
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を聞きながら、ここにはいない少女が手入れしていると聞いた花壇を眺めている。しかし、彼は唐突にこう切り出した。
「向日葵は虫を呼び寄せるという話を聞いたことがあるかね?」
「虫、ですか」
「ああ。本当かどうかは知らんが、昔から言われているな。一匹、二匹なら構わんが、あまり多くてはな……寄ってくると危険な虫もいるだろう。聞くところによると、ライオンに寄生して内側から食い殺すような虫もいるそうだ」
「うわ……フェイトさんは虫が苦手だから教えない方が良いね」
「そうね……でも、何故そんな話を?」
「なに、気をつけた方がいいと言うだけの話だ」
二人は彼の話に少しだけ違和感を憶えたが、他にも用事があると彼が立ち上がった時には、忘れてしまったのだ。二人はアスファルトから立ち上る蜃気楼の中へ消えていく痩せた背中を、いつまでも見送っていた。
その日──── 桐生は『彼女』を想っていた。あの日、初めて彼女と出会ったときの事。何もかも……どうしようもなく疲れ果て、自分が一体どっちを向いているのか、それすらもわからなくなっていた頃。彼女の暖かさに自分は確かに救われた。その時に決めたのだ。彼女の為だけに生きようと。それがどんなに人として歪んでいたとしても構わないと。
桐生はそれが、条件反射であるようにデスクに置いてある煙草へと手を伸ばす。だが、指先が煙草のケースを捕らえる瞬間『彼』の声に動きを止めた。
『桐生。少々、吸い過ぎだ。最早止めろなどとは言わないが……なぜそんなに吸う?』
桐生は手を伸ばしたまま、すまし顔で答える。
「そこに煙草があるからです」
どこぞの登山家のような事を言い出した。
『では、なければ吸わないんだな?』
桐生は心底呆れたような顔をすると彼──── ボブへと言い放つ。
「何を言ってるんですか? なければ買いに行くに決まってるじゃないですか」
『聞いた私が馬鹿だったよ。話の途中だったな』
桐生は今度こそ煙草へと手を伸ばし中から一本取り出そうとして──── 小さく舌打ちすると、ケースを握り潰しデスクへと放り投げた。
『残念だったね。買いに行くかい?』
「……いえ、後にしましょう。で、八神さんと守護騎士のお話でしたっけ」
『そうだ。残念だが、私の口からは彼女達の過去を話すわけにはいかない。私にはそのような権利もない。だが……その過去の所為で肩身の狭い思いをする事もあるようだ。中には『犯罪者』と陰口を叩く者までいると聞いている』
桐生は心底よくわからないという顔をした。
「なぜ、犯罪者なんですか? 逮捕歴か、司法で裁かれた上に刑が確定した過去でも?」
『まさか。だとしたら管理局にはいないだろう。昔
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