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空を駆ける姫御子
第十四話 〜彼女たちのお話 -桐生アスナの章-【暁 Ver】
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が、お礼をしたいと思い立ったのは良いが、何をして良いのかキャロには思いつかない。本人に聞こうにも、生憎と彼女は現在六課にはいない。()しんば聞いたとしても、何も言わずに見つめられるか、無体な物を召喚して欲しいと言われるのは目に見えている。それに……キャロは彼女を驚かせたかった。いつもアンティークドールのように表情を変えない彼女が、驚く様を見るのはどのような心持ちだろうか。キャロはそれを想像し──── とても愉快な悪戯を思いついた、童子のように胸を弾ませた。

 そんなキャロの相談をエリオが無下に断るわけもない。だが、三人寄れば文殊の知恵と言うものの、一人足りないばかりか、エリオの発想もキャロと五十歩百歩であった為、結局二人揃って仲良く頭を抱える事になった。外へ行こうと言うエリオの気分転換という名の思いつきで、八神はやてから外出許可を貰い、現在二人は近くにある森林公園へと来ている。男女が仲良く手をつないで森の中へ入っていこうものなら、不埒な想像をしてしまいそうになるが、そこはエリオとキャロなのである。そんな事は思いつきもしないし、出来もしない。

 森の中へ入って暫し探索していると、急にエリオが立ち止まった。キャロは何事かと思いながら、同じにようにエリオの視線を追い──── 魂を抜かれたように嘆息した。少年と少女の前には、木漏れ日をオーロラのように降らせながら、広げた梢を風に遊ばせている──── 古木。まるで森を守っているかのような神秘的な光景であった。二人は暫くの間、その姿に惚けていたが、エリオが何かを見つけたように幹を指さした。

「キャロ、あそこ……」

「え、あっ」

 そこにいたのは────





 その日──── 彼は嘗ての教え子達へ会う為に機動六課をへと向かっていた。実技、座学共に常にトップクラスで特に戦略、戦術に秀でた才能をみせた彼女。もう一人は、魔力と体力に恵まれ知力も優秀。()()の緩衝材にもなっていた彼女。そして──── 未だに破られていない、連続無敗記録と停学処分記録を同時に打ち立てた彼女。この三名は彼の記憶に、もっとも色濃く残っている生徒達であった。

 彼が六課を訪れると出迎えてくれたのは、ツインテールの少女と青髪の少女。彼の目的であるもう一人の少女は、少女の兄の策略によって半ば強制的に約束させられた権限を行使し、六課へ来てから初めての休暇中らしい。彼はそれを聞くと幾分残念な表情を浮かべたが、いないものは仕方が無いと、買ってきた手土産を押しつけるようにして手渡した。

 二人に案内された中庭のテラスで、昔話をしながら近況を聞く。彼女達が変わっていないことに安堵しつつも、色々な意味で頭を抱えることが多いであろう、機動六課の部隊長である八神はやてへ彼は同情した。彼は彼女達の話
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