押せば押せ 引かば押せ押せ 近場押せ
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0万の慰謝料を協会側が支払う事で片がついた。一年の長い闘いだった。それから、俺の師匠・深紅山が裁判中に定年を迎えたので一門の理事である双喜山の双喜山部屋移籍することになった。そんで今は理事長更迭に伴い理事長になるための相撲の真っ最中だ」
理事Aの演説が終わり、双喜山が壇上にあがり一礼をする。
双喜山「皆様、お疲れさんでございます。立候補者の双喜山です。えー。私は本来で
あれば立候補できる立場ではありません。理事長というのは大関、横綱だった人がなるもです。どこにも書いてありませが」
有権者席から失笑が沸く。
双喜山「随分前に一度私と同じ前頭筆頭の方がなにかの間違いで理事長になられたみ
たいです。なぜこんな事を言うかのかというと私はこの前頭筆頭という現役時代の成績がネックになり理事長選に出るお墨付きを一門からいただけませんでした。負けたら一門を破門になり独立しなければならないみたいです」
双喜山の対抗馬・理事Aの表情が凍りつく。
双喜山「タブーを言ってしまいました。もうあとには引けません。引きませんよ私 は。では、本題に入ります」
凍りついた空気を察知し有権者席・前列の理事Bが目を覚ます。
理事C「おはようございます。その前によく寝れますね。この空気で」
と隣に座る理事Bに呟く。
額の汗がライトで輝く双喜山。
双喜山「この協会。まあ臭い。カビが生えてる。私はここを喚起しますそうじをしま
す」
会場脇の選挙管理委員会席の年寄達が顔を見合わせる。
双喜山「原因は国技のプライドです。大昔から将軍、大名お抱えのこの相撲という文
化またはスポーツ。長い時間の中でいつのまにか国技になり、そして日本相撲協会が誕生しました」
選挙管理委員会席の年寄達が立ち上がる。
双喜山「まだあるんで着席願います。続けます。日本の国技なのをいいことに。しか
し、実際はお国の正式なお墨付きはないのですが。国や国営放送におねだりばかりしてきました。そうして育ったこの協会。馬鹿ばっかです。前の理事長が違法カジノの力士一斉逮捕時の会見でこうおっしゃってました。〈国技を守る〉守るって守ったのは自分のイスです。屋台骨を支える力士を切り捨てただけです」
選挙管理委員会席の年寄達が壇上に上がってくる。
双喜山「それ以上近づくな。続けます。ついこないだ私の弟子になった荒吹雪も同じ
ようなことをされました。トカゲの尻尾切りはもうおわりです。私達がアクションを起こしてこの協会を動かさないと潰れるぞ」
後方の若手親方達がまたきをせず真剣に聞く。
前列の理事B、理事Cはまわりをきょろきょろと見渡す。
双喜山「潰したくない。潰さない。その想いがある人は今錬成歌をうたいましょう」
後方の数十名の親方
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