第十三話 〜彼女たちのお話 -ティアナ・ランスターの章-【暁 Ver】
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すまし顔でしれっと答えるアスナを見ながら、はやては彼女と初めて会った時のことを思い出していた。ちらりとタカムラを見ると──── 額に青筋を浮かべていた。仕方ないだろう。冒頭の発言は明らかにアスナへ向けたものであるが、当の本人は全く気付いていない上、ボードゲームに興じているのだから。
「……桐生アスナと言う人間は目上の者に対する礼儀がなっていないようだな」
ティアナの頭には目くそ鼻くそを笑うと言う慣用句が浮かんだが、今はアスナから話を聞く方が先だと考えた。そう、アスナがティアナに相談したいことがあると言ったのだ。アスナは六課に来てから確実に変化してきているのをティアナは感じ取っていた。しかも、良い方向にだ。
「それじゃ、聞かせてくれる? あなたが会った女の子のこと」
アスナは辿々しくも話し始めた。公園で会った生きることに疲れたような目をした少女との出会いを。アスナが一通り話し終えると、ティアナが口を開く前にタカムラが割り込んできた。その瞳には侮蔑の色が浮かんでいる。
「おまえ、今『アナ・アスキス』と言ったか? チッ、なぜヤツの妹の名を知っている」
アスナは一気に不機嫌になる。彼女自身、ティアナからよく礼儀がどうこうと注意されているが、この男から『おまえ』呼ばわりされる筋合いはない。この男の方こそなぜ、彼女の名前を知っているのか、アスナは気になった。アスナの心情を知ってか知らずか、タカムラは皮肉気に言葉を続けた。
「おまえから聞いた身体的特徴も、俺が知っているものと一致している。恐らく本人で間違いないだろう。だが、あまり気分が良くなる話じゃないぞ? それでも良ければ聞かせてやる」
ティアナは情報を整理していた。アスナから告げられた公園で会った少女の名前。その名に対してのタカムラの反応。よせば良いのに、ぺらぺらと喋る事件の概要と登場人物。どうも、タカムラという男は口が軽いようであった。それらが全てティアナの中で一本に繋がっていく。整理してみると、それほど複雑な話ではない。一人の魔導師が功を焦り暴走した挙げ句、死亡。その所為で内部調査室が内偵していた全てが、水泡に帰した。そして──── その内偵していたある『組織』の報復により彼の同僚が犠牲となる。話としてはこれだけだ。だが、ティアナは内心驚いていた。少女の境遇が自分と恐ろしいほどに似通っていたからだ。
「タカムラさんの同僚が亡くなった責任は誰が取ったんですか?」
「責任だと? そんなものは暴走したヤツに全てある。俺たちの所為じゃない。暴走した挙げ句に死んだのも自業自得だ」
ティアナはそれだけで全てを理解し、且つ十分だった。要するに──── 全ての責任を
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