第十三話 〜彼女たちのお話 -ティアナ・ランスターの章-【暁 Ver】
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トを決意したティアナのような思いでソフトクリームを差し出す。少女は少しだけ迷った様子を見せていたが、顔を綻ばせながら受け取ると、美味しそうに食べ始めた。まるで──── 久しぶりかのように。
アスナが他の人間と関わるのは希である。アスナはまるで友達が出来たばかりの童女のような心持ちで、少女にまた会えるかを尋ねた。だが、少女から返ってきたのは困惑の音色だった。
「ごめんね、おねえさんが嫌だとかじゃないの。私と友達になるときっと迷惑になるから。ソフトクリームありがと。とっても美味しかった。え? 私の名前は────」
桐生アスナは帰路の途中、つい先ほど出会った少女の事を考えていた。自分で言うのは何であるが、面白い少女だった。だが、そんな事よりも──── 全てを諦めてしまった老人のような目がアスナには気に入らなかった。そして自分と友人になると迷惑になるというのはどういう意味なのか。帰ったら親友に相談してみよう。彼女──── ティアナ・ランスターという少女は、このような場合とても頼りになるのだから。
「やれやれ……。訓練終了後とは言え、犬とのんびり散歩とはな。随分と余裕があるんだな、六課は」
八神はやてはそれがいつもの慣れた作業であるかのようにデスクの引き出しから、シャマルお手製の胃薬を取り出した。水がなくても飲めるタイプで、はやては無造作にそれを口へ放り込むと、親の敵のようにボリボリと噛み砕いた。最近本当に草臥た中間管理職のようになってきた自分にへこみつつ、『潤いが欲しい』などと考えていると、桐生アスナがあの小瓶を手にしながら、はやてをじっと見ている。はやてが無言で首を振ると、アスナはつまらなそうにソファへと座り込んだ。
「アスナ。ゲームの途中で、突然立ち上がらないでよ。C4へ水中魚雷」
「……はずれ。Cの2へHarpoon」
「Fumble。あんた性懲りもなくまた持ち出してきたの、それ。A3へデコイ設置」
「……今度のは如何わしくない。『てぃろふぃなーれ』って叫ぶだけ。Bの4へ音響魚雷」
「後で没収ね、それ。Fumble。……ねぇ、アスナ? ちゃんと自己申告してる? ズルして動かしてない?」
「……ズルしてない。ティアナでも許さない。訴えますよ?」
ティアナはそれを聞くとアスナが座っているソファの後ろに陣取っていた彼女へと視線を走らせる。小さな彼女は桜色の髪を小さく揺らしながら苦笑すると、胸の前で控えめに両腕を交差させた。アスナはティアナの視線に気付くと、ゆっくりと後ろへ振り返り──── そのまま凍り付いた。
「で? 誰を許さなくて、誰を訴えるの?」
「……そんな事は言ってません」
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