第十三話 〜彼女たちのお話 -ティアナ・ランスターの章-【暁 Ver】
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ると、息を吐きながら椅子の背もたれへ身を預けた。橙色の暖かな色合いをした髪がふわりと揺れる。お気に入りのマグカップへと手を伸ばし中身を啜ったが、温くなってしまっていて非常に不味い。然程珈琲を嗜む方ではなかったが、紅茶より頭が冴えるような気がした。勿論それが気のせいだという事はわかってはいるが、気分の問題だ。
渋さしか感じられない不味い珈琲を飲んだ所為なのか、昼間の不愉快な出来事が思い出された。その時の彼女は正に、不味い珈琲を飲んだような顔をしていただろう。原因は──── そう、六課に出向してきたあの男だ。
「タカムラ君、もう一度言うてくれるか?」
「だから……俺にも教導をやらせろ。どれほどの訓練をしているかは知らんが、俺に任せれば確実に新人どもを強くしてやる」
午前中の訓練終了間際に八神はやては、久しぶりに新人達の様子を見る為に訓練場へ足を運んだ。その時、一緒についてきたエイジ・タカムラから言われた発言に、思考が停止する事態になる。はやては困ったように高町なのはを見ると、彼女は人好きのする笑顔を浮かべてはいたが、目は完全に笑ってはいなかった。許可など出そうものなら被害を受けるのは、自分である。自ら火中の栗を拾う趣味はない。
「あんなぁ、タカムラ君。……他の部署から出向してきたばかりの人間に『はい、お願いします』言うて、教導なんかまかせられるわけないやろ?」
当たり前の話である。教導官としての資格を所持している高町なのは。それ以外にもシグナムとヴィータ。そして執務官としての忙しい仕事の合間を縫って、フェイトが新人達の面倒を見ている。これ以上はないであろうという規格外のメンバーが揃っているのだ。更に新人達が熟している訓練メニューは高町なのはが、それこそ寝る間も惜しみ一人一人の実力、癖、性格などを考慮し組み上げたものなのだ。新人達の事をよく知らない人間に引っかき回されたくないというのが本音であろう。
百歩譲って、教導をするにしても、今まで熟してきた訓練内容やメニューの摺り合わせが必要であるし、何より高町なのはを初めとする他の人間とのコミュニケーションが不可欠だ。しかし、この男──── エイジ・タカムラという人間にはその能力が欠如していた。
「人間の歴史を顧みても平和を守る為には多少の犠牲は付きものだ」
エリオとキャロの座学に於いて、ミッドチルダの成り立ちや歴史を学習していた時の彼の発言である。この発言に八神はやては頭を抱え、シグナムは激怒した。
発言の内容が正当か不当かの話ではない。例え正しくとも、それは決して管理局員が口にしてはいけないことなのだ。『平和の為には多少の犠牲は止む無し』その考え方は──── テロリストと何ら変わらないという事を彼は気付いていなかった。結
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