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黄砂に吹かれて 〜Another version〜
第四章
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「何も感じないから」
「その人しか、だね」
「そう思ってしまうから」
だからだった。
「一人の様な気よ」
「そしてお酒を飲んでも」
「不思議ね。どれだけ飲んでもね」
またこの話になる、私は乾いた苦笑いで言った。
「酔わないわ」
「そういう時もね」
「飲むといいのね」
「気が済むまでね」
「砂漠はお水をどれだけでも吸い取るわ」
砂の中にだ、砂漠は水をどれだけ注ぎ込んでも砂漠だ。それは変わりはしない。
「今の私がそうね」
「だから今もだね」
「幾ら飲んでもね」
酔わなかった、酔えなかった。
「何も感じないわ」
「辛いね、それも」
「辛くはないわ」
そうした感情も感じなかった、今の私は。
「何も感じないから」
「だからだね」
「そう、辛くないから」
ただ空虚なだけだ、辛くはない。
それで今もモスコミュールを飲んでもだった、味は感じても酔いは感じないで。
もう一杯頼んだ、彼はその私に今度はこう言って来た。
「砂漠も。何処までも水を吸い取るものではないよ」
「最後はそれが出来なくなって」
「そう、砂は土に変わるよ」
そうなるというのだ。
「何時かはね」
「だといいわね、じゃあ終わりを目指して」
「歩いていくといいよ」
この砂漠の中をだというのだ、彼は私にこう言ってカクテルを勧めるだけだった。そして私はそのカクテルを飲むだけだった。
砂漠を一人で歩き寂しさ、空虚を感じたままだった。私は何処までも歩いた。そして歩きに歩いたその時に。
飲んでやっと感じた、思い出した。
この感触を。私は微笑んでバーテンダーに言った。
「酔ったわ」
「やっと出られたみたいだね」
「ええ、長い旅だったわね」
「旅も終わるものだから」
「それで今終わったのね」
「じゃあこれからはね」
「砂漠は出たから」
このことを感じ取った、そして。
彼にだ、私は寂しさが消えた微笑みで言った。
「別の場所に行くわ」
「今からだね」
「今度は前よりもいい場所にね」
砂漠に行く前にいたあの場所よりも、嘘の笑顔で終わるしかなかったあの場所よりもいい場所に行くつもりだった。
だからだ、私は彼に言った。
「行くわ」
「よい旅を」
彼はその私にここでも笑顔で言う、そして。
そっとあるカクテルを出してくれた、そのカクテルは。
「これを」
「ストロベリーシェークね」
ピンク色は苺の色だ、苺の甘いカクテルだ。
「頼んでいないわよ」
「奢りだよ、遠慮せず飲んでくれたら嬉しいよ」
「苺、甘い恋ね」
「今度はその旅を楽しんでくれることを願って」
「そうなればいいわね。苺の様に甘い恋ね」
「甘酸っぱくもあるけれど」
苺のその味から、バーテンダーはジョークも入れてきた
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