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黄砂に吹かれて 〜Another version〜
第一章
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           黄砂に吹かれて 〜Another version〜
「いいわ」
 私は無理をして微笑んで彼に返した。
「そこから先は言わなくて」
「いいんだ」
「私じゃないから」
 私ではない名前、私の他に好きになった相手の名前だから。
「言わなくていいわ」
「そう、じゃあ」
「仕方ないわね」
 私は今度はこう彼に告げた。
「私以外に好きな人が出来たから」
「御免・・・・・・」
 彼は私に俯いて言葉を返した。
「俺は」
「そのことも言わなくていいわ」
 私は無理をして微笑んだまま彼にまた言った。
「もうね」
「じゃあ」
「これで終わりよね」
 私以外に好きな相手が出来てその相手と交際することになる、そうなれば私の場合もう選択肢は一つしかなかった、彼の場合も。
「もうね」
「ああ、じゃあ」
「さようなら」
 私は彼の顔を見て、特に目を見て告げた。
「これでね」
「笑ってるんだね」
「人はその人の最後に見た顔を忘れないから」
 それでだった、私は今無理をして笑っているのだ。
「泣いた顔なんて覚えていて欲しくないから」
「じゃあ俺も」
「笑ってくれるかしら」
 好きな人だから、私は彼の悲しい顔を覚えていたくないから。この恋を悲しい思い出だけにしたくないから。
 私は彼にだ、こう言った。
「それでね」
「お別れだね」
「そうしましょう、それじゃあね」
「うん、じゃあ」
 彼も笑顔になった、そのうえで私に一言言ってくれた。
「さようなら」
「永遠にね」
 私はこの言葉も笑顔で出してだった、そのうえで。
 私から席を立った、振り向きはしなかった。
 そして私は一人になった時にだ、上を見上げて言った。夜の都会の空はビルとビルの間に見えるけれど星も月も見えない。
 その何もない空を見上げながら。私は言った。
「嘘吐き」
 実はわかっていた、彼は好きな人が出来たんじゃなかった。もう既に好きな人がいてそのうえで私と付き合っていた。 
 その左手の薬指には跡があった、しっかりとした跡が。
 私は最初に彼に会った時にもう気付いていた、あえて何も言わなかっただけで。
 そしてこの日が来ることもわかっていた、だから驚きはしなかった。
 けれどだった、この日が来ることがわかっていても。
 辛かった、いざこの日になると。それで私は一人になるとこう呟いた。
 呟いてもどうにもならない、何も戻らないし変わらない。私は砂漠の様な空虚な恋を空虚な心でお笑せた、それだけだった。
 そして空虚なままだった、恋が終わってから。
 私は空虚な日常に入った、朝起きて会社に行って仕事をしてもだった。
 味気ない、本当に何の味もしない周りには何もない様な日々だった。けれど私は職場の同僚にはこう言わ
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