過去編
挿話集
小噺集
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くスイミングスクールなどで使われている競泳水着の亜種みたいなものの腰の部分にひらひらして布をあしらった可愛らしいデザインで、この時ばかりは普段大人しい藍子もどこかはしゃいでいる様子だ。
だが、俺はふと気になりその藍子に話しかけた。
「藍子、お前、泳げたっけ?」
「え?……あ」
「あ、そう言えば姉ちゃん泳げなかったね」
昨年の事だろうか、水城家と紺野家合同で海へ旅行に行った時、俺と木綿季が肩まで海に浸かる一方、藍子は足首までが限界だった。3日間の旅行中の努力のかいありかろうじて腰までは浸かったものの、泳ぎの苦手克服には至らなかったような気がする。
「じゃあ、藍子ちゃんは向こうの浅いプールで練習だな。俺が見てあげるよ」
意外と面倒見が良い蓮兄が藍子の練習監督に名乗り出る。教えるのも上手いし、適任だろう。
「私は近くで荷物番してるわ。螢、ちゃんと木綿季ちゃんの面倒見てあげてね」
「ん、了解。後で蓮兄のとこにも行くよ。3人でも遊びたいし」
「そうだな。それがいい」
姉さんが荷物番を引き受け、俺と木綿季は予定通り遊ばせてもらう事にする。
「ごめんね。螢さん、木綿季……」
「大丈夫だよ姉ちゃん!また後でね」
「うん」
「それじゃ藍子、また後で」
ウォータースライダーを木綿季を前に前に抱えながら滑ったり、造波プールの波をジャンプで飛び越えたり、低い飛び込み台から跳んだりひとしきり楽しんだ後、俺と木綿季は流れるプールで流されていた。
「気持ちいいねー」
「そうだな」
2人して犬掻きのような姿勢で施設内を一周するそれに何のあても無く流され続ける。
「そろそろ、藍子のとこ戻るか?」
「んー……もうちょっとだけ」
「……んじゃ、次浅瀬プールに近づいたら上がろうな?」
どうせぐずるだろうとは思っていたのであらかじめ用意していた譲歩案を提示する。が、
「はーい…………えいっ!」
「??……な、木綿季??」
突如、木綿季が後ろから首に腕を回してくる。柔らかな二の腕が首筋に当たり、その感触に動悸が激しくなる。
「おい、木綿季……」
「んー、なにー?」
いや、なにー?じゃなくてだな……
右耳がむず痒いのは恐らく木綿季の顔がそこにあるから。耳に感じる呼気と背に感じる暖かな存在が同時に、ゆっくりと動いている。
「……そろそろ上がるぞ」
「うん」
今度はやけに素直に従う。
だが、腕をほどいてくれる気配は無いので仕方なく木綿季を背負いなら縁へ向かって泳いでいった。
縁に着くと木綿季が腕を緩める気配がしたので内心でやっとか、とため息をついた。
離れる寸前、頬に暖かなものが押し付け
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