過去編
挿話集
小噺集
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「……すまん。実は、俺もあの時寝ぼけてて……よく読んでなかったんだ」
「な…………」
一晩悩んだのは何だったのか。木綿季は安心とほんの少しのガッカリ感で気疲れがどっと溢れ出した。
「うー……。螢のバカ」
「……何で罵倒されんの俺?」
本気で落ち込んだらしく、肩をガックリと落とす螢。木綿季はムッスリと頬を膨らませながら手元の弁当を広げ始めた。
「ん?何か言ったか?」
「何も!」
ついツンツンと返すと、螢は今度は何故かクスクスと笑いながら木綿季の頭に優しく手を置いた。
「ま……いつかな」
陽光降り注ぐとある日の昼下がり……他愛の無い一幕は突然起こって、ふと消えた。
4,IF 〜水城家を一般家庭にしつつ、いたって健康な紺野家の隣に住まわせてみた〜
ー西暦2020年夏ー
庭に向かって開け放った窓から入ってきた風が、チリンチリンと朝顔の絵柄の風鈴を鳴らす。
その音の合間を縫うようにミーンミーンとセミの鳴き声もする。
季節は夏。夏と言えば蒼い空、白い雲、そして海。
田舎に親戚宅や親の実家がある家は夏休みが始まるや否や涼しくもあるそこに帰省してしまう。海は無くとも川でもがあればさぞや楽しいだろう。
「……暑い」
しかし残念ながら我が水城家はそんな場所に縁は皆無だ。
爺さんはただの隠居で各地を放浪中、行方は知れない。
親父は単身赴任でイギリス、今年は帰って来れないらしい。
母親は年中無休の総合病院に務めていて今日は夜勤のため帰ってこない。
家に現在家に居るのはプー太郎の兄と暇人な姉だけだ。なお、水城家のヒエラルキーの頂点に君臨する我が妹君は本日友達の家にお泊まりだそうだ。
姉ではないが、暇を持て余した俺は部屋に戻って趣味のネットゲームでもしようかと立ち上がる。その時、
「螢〜。遊ぼーよー」
「……ちっ」
隣に住む幼馴染の相変わらず元気な声が響いて来た。しかも方角から察するにまた家の庭に不法侵入している。
この年下の幼馴染。どうやら元気を双子の姉から全てふんだくって生まれたらしく、お淑やかで礼儀正しい姉の藍子とは対照的に喧しい。
ゾンビのように寝転がっていただるい体を床から起こし、のそのそと庭の窓へ向かって歩き出した。
「おい、木綿季……人の家の庭に勝手に入るなとなん……ぬぉぁ!?」
突如として顔面を襲った放水。鼻に入った水でむせながら生垣で区切られた向こうにある紺野家の方を見てみ
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