過去編
挿話集
小噺集
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り続ける攻略組は尊敬される存在であると同時に、恐れられている。
少女の視線から感じられるのは……凡そその中間色と言ったところか。
「―――と、言うわけだ。ほい、代金」
トレードウィンドウに金額を入力すると、少女が何かを言う前にそれを終了し、立ち上がった。そして背の大太刀を指して言う。
「……いつか君にコイツを任せられる日を楽しみにしてる」
後にアスナにこの少女を紹介された時は流石の俺も運命というか不思議な巡り合わせに驚いた。
偶然の出会いが長い付き合いになることもある。そんな数奇な運命もまた大きな意味を持っているのだ……。
2,一条の剣閃
空気を切り裂く乾いたサウンドが闇夜を貫く。正確無比な命中力を誇るアスナの細剣は目標のHPを消し飛ばした。
「……っ!?」
ズキ、と鋭い痛みが頭に走る。痛みの無いこの世界だが、都合の悪い事に寝不足の鈍痛までは消してくれないらしい。
だが……、とアスナは暫しの休憩を挟むのを口実に自分に言い聞かせる。この痛みを感じられる内はまだ生きているという証拠だ。この痛みのおかげでまだ自分は進めるという気持ちになってくる。
1分ほど経つと付近でMobが湧く気配がした。次なるターゲットと見定め走り出そうとした時、シンとした森をけたたましいアラート音が切り裂いた。
数あるトラップの中で最悪の部類に入る《アラームトラップ》の音に違いない。
「…………ッ!!」
とんでもない数のモンスターを呼び寄せる《アラームトラップ》は例え、パーティーだとしても非常に危険だ。自分1人行ったところで何ら変わらない。更には巻き込まれて死んでしまう可能性すらある。
だが、彼女に見捨てて逃げるなどという選択肢は最初から存在しなかった。攻略組随一の敏捷値を駆使して複雑な木々の迷路を抜け、音源にたどり着く。
そこで繰り広げられていた光景は想像を遥かに越えていた。
闇夜を舞うポリゴンの欠片。その中心で大きな刀を振るい、力強く踊る影。影が動く度にポリゴンが舞い上がり、やがては消えていく。
何十ものモンスターがその死の舞踏に巻き込まれ、儚く消えていく様は幻想的でさえあった。
津波のように押し寄せるモンスター群が途絶えたのはアスナがアラームを聴いてから約10分後の事だった。
(……あの人は)
人影がこちらに気がつき、刀をピクリと動かすが、カーソルとそこに表示されているのであろう名前を確認すると武器をしまった。
「何か用かな、副団長殿?」
「……あなた程のプレイヤーがアラーム・トラップに掛かるなんて、らしくないのでは?紅き死神さん」
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