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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十一話 フェザーン謀略戦(その3)
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う。そして地球の復権を考えた。そんな地球にとって一つの転機が訪れます。宇宙暦六百四十年、帝国歴三百十一年に起きたダゴン星域の会戦です。それまで人類社会は帝国の下に一つだと思われていました。しかし自由惑星同盟が存在する事が分かり、人類社会は二つに分かれている事が分かったのです。地球は自由惑星同盟を利用して地球の復権を図ろうとした」
レムシャイド伯は俺が自由惑星同盟の名称を使っても何も言わなかった。本当なら“反乱軍と呼べ”とか叱責が来るところなんだがどうやらそんな余裕は無いらしい。しきりに“ウム”とか相槌を打っている。
「ダゴン星域の会戦後、自由惑星同盟は国力の上昇に努めました。一方帝国は深刻な混乱期を迎えます」
「暗赤色の六年間か……」
レムシャイド伯が悲痛な声を出す。 暗赤色の六年間……、陰謀、暗殺、疑獄事件。あの時帝国は崩壊しかかっていた、マクシミリアン・ヨーゼフが登場しなければ帝国は解体していただろう。
「マクシミリアン・ヨーゼフ帝によって帝国は立て直されますが、彼は外征を行ないませんでした。簡単に同盟を征服できるとは思わなかったのでしょう」
「距離の暴虐だな」
距離の暴虐、レムシャイド伯の言った言葉はマクシミリアン・ヨーゼフ帝に仕えた司法尚書ミュンツァーの言葉だ。彼は自由惑星同盟が帝国本土から遠く離れている事が帝国軍の兵站や連絡、将兵の士気の維持を難しくさせると皇帝に説いた。実際彼の言うとおりだろう、戦争は未だにだらだらと続いている。
「帝国が外征を行なうのは次のコルネリアス帝になってからです。地球はこの時期に自由惑星同盟と独自に接触しようと航路を探索した……」
「そしてフェザーン回廊を見つけた……」
呻くような口調だ。そしてレムシャイド伯は俺を見て“続けよ”と急き立てた。命令口調なのは気に入らないが真剣に捉えてはいる。
「そうです。そして彼らは考えた。フェザーンに中立の通商国家を造り富を集める。その一方で同盟と帝国を相争わせ共倒れさせる。その後はフェザーンの富を利用して地球の復権を遂げると」
今度こそレムシャイド伯の呻き声が聞こえた……。
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