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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十一話 フェザーン謀略戦(その3)
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なさこそが黒狐の真骨頂だ。
「それは自由惑星同盟政府からの正式な提案なのかな」
黒狐が低く渋い声で問い掛けてきた。もっとも声に何処か面白がっている響きを感じたのは俺だけではないだろう。
「いいえ、私個人の提案ですよ。自治領主閣下」
「なるほど、では答える必要は……」
試す様な口調と視線だ。にっこり笑みを浮かべた。そして朗らかに答える。
「全然有りません」
ルビンスキーが俺を見る、俺も奴を見返した。一瞬間が有った後ルビンスキーが笑い出し俺も笑った。皆が呆れた様な表情をしている中、レムシャイド伯だけが白い眼で俺とルビンスキーを見ている。笑い終えるとルビンスキーがチラと横のレムシャイド伯を見た。
「答える必要は無いが伯爵閣下に変な誤解はされたくない。ヴァレンシュタイン中将、君の質問に答えよう」
俺は軽く一礼した。そんな俺をルビンスキーが満足そうに見ている。どっちが相手を思い通りに操っているのだろう。まるで狸と狐だな。となると俺は狸か……。
良いんじゃないか、狐より可愛いし、愛嬌も有る。それに化かし合いでは狸が勝っている。愛らしさ、実力、ともに狐より上だ……。必殺技は死んだふりか……、そこは今一つだな。
「帝国から独立しろとのことだが意味が無いな、今でもフェザーンは名目はともかく実質は独立国と言って良い」
ルビンスキーがチラっとレムシャイド伯を見た。目に皮肉な色が有る。さっきレムシャイド伯が言った“フェザーンは帝国の自治領”を意識しての言葉だな。後々この件で帝国から責められてもあの場はそう言うしかなかったとか言うつもりだろう。レムシャイド伯も忌々しそうな顔をしている。
「フェザーンは商人の国だ。商人は実を重んじ、意味のない名目などには興味が無い。今のままでフェザーンは十分に満足している。……せっかくここまで来てもらったのに君の期待には応えられない様だ。残念だな、ヴァレンシュタイン中将」
言葉とは裏腹に嬉しそうだな、ルビンスキー。主導権を取ったつもりか? もう少し残念そうな顔をしないと興醒めだな。お前の欠点は他者の上に立ちたがり過ぎる事だ、だから芝居が酷くなる。まあ良い、これからが勝負だ。ルビンスキーは楽しそうに俺を見ている。何時までそうしていられるかな、俺は笑みを浮かべた。
「自治領主閣下、私は独立してはどうかとは言いましたが帝国からとは一言も言っていませんよ」
ルビンスキーの表情が変わった。予想外の返答だったのだろう、笑みを消しこちらをじっと見ている。そしてレムシャイド伯を始め他の連中は訝しげな表情だ。
「帝国から独立しろと言って、“はい、分かりました”なんて貴方が答えると私が考えたと思うんですか、レムシャイド伯が居るこの場で。甘く見ないで欲しいですね」
「……」
あらあら、黒狐が黙り込
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