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世紀末を越えて
プロローグ
鍵穴
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 私はこの部屋に入る時は膝を抱えるようにして横になり丸まって眠る。こうするととても落ち着くし、この部屋に入り易いのだ。私の部屋、それは他愛も無く、単に私の妄想の類なのだろう。或は夢なのかもしれない。私がこの部屋の中で殺されて以来、どことなくこの部屋に入るのは抵抗があった。改めてこの部屋に入ってから、私は気づいたのだが、この部屋は完全に以前の面影は失われていた。何もかも壊れ、あの服の布地も、何かに切り裂かれた様に…。今私が何を見ているかと言えば、それは間違いなく私の内面上の事なのに、この有様ではこれが本当に私なのか、私の中に、私を分断する隔たりが出来てしまったようだ…。私は、私が私である為に、此れが私であるという手がかりが欲しく、この部屋をひたすら見て回る事にした。
 本当は、何処となく解っている。でも恐らく知りたくないのであろう。そう、私が、私である為に…これは、この部屋が単なる想像の世界では無い事を。この部屋には、私が、この部屋に居るという感触があるのだ、私の五感が、普段の生活と何ら変わりのない様に、こんなにもはっきりと…。だから今までこの部屋で、私はこの部屋の所以について、考えるのを拒んで来た。彼女は私のこの部屋の事、この前起きたあの出来事、それから、今の私に服が創れない事を知っていた。挙句、どうすれば、再び服を創る事が出来る様になるかまで知っており、そして鍵の存在を示唆した。普段私は鍵が必要で、それを誰かに貰わなくてはならない様な物など持ってはいない。となると、思い当たるのは、やはりここしか無く、ここに、有るのだろう。鍵を使う事によって、開く何かが。
 壁には無い、壁紙?なんてものはないし、椅子は、壊れている。壊れているから無いなんて事も無いかと思い、調べてはみたものの、やはり無い。一体何処にあるのだろう、無いのではないか。いや、床はどうだろう。私が初めて入ったその時から、既に敷かれてあった世界。その下に敷かれている…絨毯?考えてみると、その下は今まで見た事が無かった。部屋の四隅いっぱいに敷かれている為、認識としては部屋の一部として捉えていた。今、その世界の布地はあの時のまま、私の膝か、高い所では腰の辺りまで剥離浮遊してはいるものの、確かに根底となる、全ての基となる底は在る。その下はどうなっているのであろうか。
 私は部屋の一角へと向かい、浮遊し重なる沢山の布地を掻き分け、その下に敷かれている絨毯を探り当て、そうしてその絨毯を思い切り捲り上げた。
 …あった…?
その絨毯の下は壁と同じ無地の白であった。丁度床の真ん中に位置する所に小さな凹みがあり、そこに長細い小さな穴があったのだ。これが鍵穴なのであろうか。そっと手でなぞる。確かに、これは鍵を差し込み、特定の人物にしか開けられない様にする為の、鍵穴なのであろう。
 しかし腑に落ちない所を挙げ
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