十九話
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いがあやかの中ではあった。健二の事を考えれば複雑な思いを抱くであろうことも察することができた。だが、本人の言葉でしっかり聞かねばならない。
「宮内さん、貴方はアスナさんのことを……」
「好き、だよ。どうしようもないくらいに」
時を同じくして、明日菜は街中を歩いていた。あやかの腕の中で存分に泣いたものの、長年の想いが終わりを迎えてしまったのだ。直ぐに心の整理はつきはしない。恐らく眼は真っ赤であり、余り人に見せられる顔ではないだろうと思った明日菜は人の少ない道を選びながらエヴァンジェリンの別荘を目指す。あそこは、引きこもるには絶好の場所なのだ。
「宮内さん、貴方はアスナさんのことを……」
へ? と思わず明日菜は声を漏らしてしまった。何故、こんなひとの少ない場所で自分の名前が聞こえてくるのかと。さらに、この声はあやかのものだと分かってしまったがために明日菜は周りを見渡し探してしまった。そして、見つけた。そして……聞いてしまった。
「好き、だよ。どうしようもないくらいに」
あやかと共にいた少年、健二の想いを。
「実を言うと、俺は明日菜がこの学園祭で告白する事を知ってたんだ。だからこそ、その前に行動を起こすべきだった」
何を思ってそう言っているのかはあやかにも予測がつく。好きな人に幸せになってもらいたい。それは誰もが抱く当然の思いだろう。そして、同時に普通ならそれを自分の手で成したいと、そう思うはずだ。今の健二は明日菜の想いが成就し、幸せになって欲しかったという思いと、これで自分が明日菜を幸せに出来るのでは、という思いがせめぎ合っているのだ。後者の思いは、明日菜がフられた事を良しとする様な思いでもある。幸せになって欲しい人物の不幸を喜ぶ。そんな思いを抱いてしまった事に、苦しんでいるのだ。
「ここ最近は忙しかったが、そんなことは理由にならない。俺が想いを伝えるなら、明日菜がそうする前にしなきゃいけなかった。もし、見なかったらなまだ自分をごまかせた。でも、そんなifの話なんて無意味だ。もう、過ぎてしまったんだから」
「……それで、宮内さん。貴方はどうなさるんですか?」
想いを伝えるのか、そうあやかは問うているのだ。だが、それこそ健二には意味の無い問いだった。誰にも言わないつもりだったが、少しくらいぼかして愚痴を言うのもいいかもしれない。
「さすがに今すぐなどとはいえませんが、貴方は自分の想いをアスナさんに伝えるべきです」
返答の無い健二に否、もしくは悩んでいると解釈したのか、あやかが先に口を開いた。
「ここまで苦悩するほどに、貴方はアスナさんを想ってらっしゃるのでしょう。なら、ここで終わりになどしてはいけませんわ」
「雪広さんの言う事はもっともだよ。でも、もう時
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