第一章
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脂肪率
谷口正典は一見すると痩せている、実際に周りからはよくこう言われる。
「御前ちゃんと飯食ってるか?」
「そんなに痩せてて大丈夫か?」
「夏バテとかしないか?」
「身体もつか?」
「ああ、大丈夫だよ」
その痩せていると見える身体でだ、正典は周りに答えるのが常だった。見れば確かにひょろっとした感じでスーツにも着られている感じだ。眼鏡をかけた丸い目の細長い顔で髪は事務関係の人間らしく七三に分けている。
確かに彼は痩せていてそれでだ、職場の女の子達にも言われるのだった。
「谷口さんってどうもね」
「あまりにも痩せててね」
「ちょっと不安よね」
「倒れそうかね」
こう言うのだった、彼女達も。そして本人も心配になっていた。
同僚の岡田智、元々ラガーマンでがっしりとした彼とビアホールでビールを飲みながらこう言うのだった。
「俺大丈夫かな」
「痩せているからか」
「ああ、結構以上に痩せているだろ」
「痩せ過ぎじゃないか?」
智もこう言うのだった。
「僕が見てもそう思うな」
「やっぱりそうか」
「食べてるよな」
「一応さ」
言いながらソーセージを食べる。
「結構」
「ビールも飲んでるし」
「夏でも食べる様にしてるよ」
「だったら大丈夫なんじゃないかい?」
「それでも言われるんだよ」
周りから痩せ過ぎだの大丈夫か、などと。
「倒れそうとかさ」
「どうだろうな、背は一七四位かな」
智は一八五ある、彼から見れば低いが普通位と言える。
「それで体重は」
「六十だったよ、前に家で風呂に入る前に測ったら」
「普通だよね」
「ああ、普通だよな」
一七四で六十ならというのだ。
「俺は」
「六十以下なら危ないだろうけれど」
「それで何で言われるかな」
「外見かな、まあそれだけあったらさ」
一七四で六十なら、というのだ。
「気にしなくていいよ」
「じゃあ今もか」
「飲んで食べて」
そしてだというのだ。
「体力つけようか」
「そうしよう、まず食べないとね」
「うん、そういうことだよな」
正典は智の言葉に頷いて大ジョッキのビールを美味そうにごくごくと飲んだ、そうして楽しんだのであった。
その中でだ、智はこうも言った。
「ところでまたそろそろ」
「ああ、健康診断だね」
「それがあるよ」
「あれで引っかからないよな」
「痛風とかね」
丁度ビールを飲んでいる、それで智はこの病気を話に出した。
「それになるとね」
「まずいよな、まあ実はビールは飲むけれど」
「飲む回数はそれ程度でもないね」
「ああ、俺実は甘党なんだよ」
それビールはあまりとだ、正典は言う。
「だから痛風は
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