第四章
[8]前話
「思ったよりよくなかったかも」
「よくなかったの?」
「そうだったの」
「だって、後ろにね」
背中、そこにだというのだ。
「誰もいないっていうのはね」
「それがなの」
「どうしてもなの」
「うん、私これまでずっと後ろに皆がいたじゃない」
最前列にしかいなかったから当然だ、このことは。
「けれどそれでもね」
「今回は皆が前にいて」
「後ろにはいないから」
「それがなのね」
「どうしても」
「うん、ちょっとね」
首を右に左に傾げさせながらそのうえでの言葉だった。
「微妙だったの、違和感があって」
「そうした感じだったのね」
「背中が寒かったわ」
誰もいないせいでだ、どうしてもそう感じたというのだ。
「後ろ見たら誰もいなくて寂しかったし」
「じゃあ一番後ろは嫌?」
「そうなの?」
「小さいのは確かに嫌よ」
小柄なことへのコンプレックスは確かにある、とにかく小学生に間違えられていつもあれこれ言われるからだ。
だがそれでもだとだ、朋子はいうのだ。
「けれど後ろに皆がいてくれるから」
「そこは安心できたのね」
「そうなのね」
「そうなの、まあ後ろから意地悪する娘もいたけれど」
悪戯でだ、これは誰かが後ろにいればどうしても起こり得ることだ。だがそうしたことを考慮してもだというのだ。
「それでもね」
「後ろに誰かいてくれるのはいいっていうのね」
「これまでもそうだったから」
「最後列も完全によくはないのね」
これが朋子の最後列になった感想だった。
「そのことがよくわかったわ」
「そうなのね、慣れていないし」
「このこともあって」
友人達もわかった、朋子のその考えが。
「じゃああんたはやっぱり」
「一番前がいいっていうの?」
「うん、そうなるわよね」
朋子は考える感じの顔で友人達に述べた。
「結果としてね、じゃあ最前列に戻ってもね」
「そうなってもなの」
「これまでとはちょっと違うと思うわ」
憧れていた最後列のことを知ったからだ、それでだというのだ。
「嫌なことばかりじゃないわね」
「じゃあ小さいってことも」
「そうなるのかしら」
「みたいね、じゃあこれまでよりはね」
少しだけでもだ、それでもだというのだ。
「小さいことにもコンプレックス感じずにね」
「一番前にいるのね」
「これからのあんたは」
「そうしたいわね、少しだけでもね」
笑顔で言う朋子だった、そしてだった。
次からまた一番前になった、だがそれでも朋子はこれまでよりはその一番前に笑顔でいられた。後ろにいる皆のことを感じられるから。
最後列 完
2013・6・28
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