暁 〜小説投稿サイト〜
犬と猪
第一章

[2]次話
                犬と猪
 もうすぐ大晦日です、それで。
 犬は今か今かと待っていました、誰を待っているかといいますと。
 猪です、彼は次の干支の猪を待っていてそれで今彼が来るのを待っているのです。
 それで前の干支で今は遊びに来ている鶏にこう言いました。
「猪さんは何時来るのかな」
「何時ってそんなの決まってるじゃない」
 鶏は素っ気ない顔で犬に返します。
「今日が終わった時だよ」
「大晦日がだね」
「そう、その時だよ」
 その時にならないと猪は来ないというのです。
「それは犬さんも同じじゃないか」
「確かにね、大晦日が終わった時にね」
「ここに来たよね、前も」
「その前もね」
 十二年に一度のお仕事の交代の時にというのです。
「そうだったね」
「ほら、だからね」
「猪さんもなんだ」
「そうだよ、その時に来るよ」
「それでなんだ」
「そうだよ、だから今あれこれ言ってもね」
「仕方ないか」
「落ち着いて待っていればいいんだよ」
 これが鶏の言葉です。
「今ここでね」
「それもそうか」
「そうだよ、それでね」
 鶏は犬にあるものを出してきました、それはというと。
「これでも飲んでね」
「ああ、お酒なんだ」
「そう、これでも飲んでいればいいじゃない」
「お酒を飲んで時間を潰すんだ」
「そうしたら?」
 これが鶏が勧めることでした。
「どうかな」
「そうだね、僕もお酒好きだしね」
 犬の好物の一つです、それでなのでした。
 鶏から笑顔でそのお酒、樽に並々と入っているそれの中に樽と一緒に用意されていた杯を入れて一杯飲みました、そして言うことは。
「あっ、これは」
「どうかな」
「うん、美味しいよ」 
 飲んでみての感想です。
「いいね、このお酒」
「山城の方のお酒だよ?」
「ああ、京都だね」
「そう、あそこの宇治の方のね」
 そこのお酒だというのです。
「だから美味しい筈だよ」
「そうだね、これだとね」
「どんどん飲めるね」
「ええと、あては」
「はい、これね」
 鶏が出してきたのは煮干です、犬はお肉を食べるのでそれを出したのです。
「これでいいね」
「ああ、煮干も好きなんだよね僕」
「じゃあこれでいいね」
「うん、じゃあね」
 犬は煮干も食べてそのうえで飲むのでした、そして。
 そうしてです、こうも言うのでした。
「猪君を待っている間ね」
「飲んで待っていればいいよ」
「そうさせてもらうよ」 
 こう言ってでした、そして。
 犬はお酒を飲んで煮干を食べながらそのうえで猪を待つことにしました、そしてです。
[2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ