十八話
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抗を止め必死に声を掛けだした。朝倉の数えるカウントは既に5に達している。あと5秒たってもステージに戻れなければ、そこで健二の敗北が決まる。
「早く、立ちなさいよぉ!!」
数百はいるだろう観客達をも上回る明日菜の声が空へと響いて行った。
「………………」
簡潔に言うならば、健二は既に意識を取り戻していた。動かなかったのは体が拒否していたことと、ここらで充分ではないかと思ってしまっていたからだ。だが、出来てしまった。立ち上がる理由が。考えてみれば、対戦相手は思い人の思い人。だと言うのに、自分の思い人……明日菜はタカミチではなく自分に声をかけてくれている。勝者であるタカミチに賞賛の声ではなく、敗者の自分に激励の声を。こうなっては、立ちあがるしかないだろう。男の意地にかけて。
「6! せぶ……宮内選手、立ちあがったー!! だが、ステージに戻るまでカウントは止まりません! 8!」
「カウントを止めろ」
「!?」
カウントが10に達するまでに健二はステージに戻ることができるのか……観客達はそれを固唾を飲んで見守る筈だったが、健二は瞬動で一般人に認識させる間もなくステージに戻ってきていた。
「さあ、これで最後だ」
「来るといい」
タカミチの咸卦の気が、健二の戦いの歌の魔力がこの戦い最高潮の高まりを見せる。勝負が決まる……それが観客達にも分かったのか、再び会場は静寂に包まれた。そして、健二がその場から姿を消した。
「力比べか!」
消えたといっても、それは一般人にとってのみ。裏の者たちは空へと飛びあがる健二をしっかりと捕えていた。健二は体を大きく後ろに反らし、まるで矢を解き放つ寸前の弓の様な体勢になっている。
「いく、ぞ!」
――――突き穿つ……
この真名解放に特別な意味は無い。ただ、自身の最大の攻撃であると言う意を込めているだけだ。
――――死翔の槍!!
健二の渾身の魔力が込められた一投が、タカミチへと迫る。対して、それを迎え撃つのはやはりタカミチの唯一の技である居合い拳。ただし、咸卦法の状態で放つ威力に重きを置いた、先ほどまでとは別バージョンのそれだ。
――――豪殺……
タカミチの右腕へと濃密な気が集まる。幸いなことに健二が居るのは上空。観客の事は考えなくていい。
――――居合い拳!!
二人の渾身の一撃が、両者の間……ややタカミチよりで衝突した。
渾身の一撃の衝突。タカミチは先ほどそれを力比べと称したが、今回に限ってはそれは正しくなかった。健二の一投とタカミチの一撃、これらを他のものに例えるならこうだ。タカミチのそれは全てを押し潰す鉄柱であり、健二のそれは全てを貫く針である、と。お互いの技が同質のものであったならタカミチ
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