十八話
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リンの別荘で休養をとった。その時、明日菜が漏らした健二がトーナメント表を見ながら普段では見せない様な闘志を発していたとの言葉にエヴァンジェリンはタカミチこそが健二の目的の相手なのかと思った。だが、今日のこれでそれは否定されたわけだ。では一体誰なのか……あれほどの事を行わせる相手とは一体。エヴァンジェリンは晴れぬ疑問を抱えながら、ぼんやりとステージを見つめていた。
戦いの歌とセンリガンを発動させた後、健二が最初に行ったのは試合開始直後からずっとステージに突き刺さっていた短いほうの棍を回収することだった。邪魔はするまいということなのか、その間タカミチは不動だった。
「さて、始めようか」
健二が構えをとる。右手に長棍、左手に短棍を持ち両腕を大きく広げた、まるで大空にはばたこうとする鳥の様な構えだ。対してタカミチは変わらずポケットに手を収め、居合い拳の構えをとる。
「そうだね。改めて、始めよう」
仕切り直しの言葉と共にタカミチは総数10の居合い拳を健二へと放つ。顔に3、腹部に7放たれたそれは誰に感知されることも無く健二に直撃するはずだった。しかし、現実はどうだ。健二が棍を振うとパンパンパンと乾いた音をたて、居合い拳は弾かれた。
「………………」
顔にこそ出さないがタカミチは驚いていた。たしかに健二は身体強化を行っている。しかし、だからといって居合い拳を防げる理由にはならない。元々この技はその静けさ、察知のし難さが売りなのだ。身体強化をかけただけで防げるのなら裏の世界で通じるわけがない。
健二が近づいてくる様子は無い。こちらから接近戦を仕掛けても構わないが、その前にもう一度とタカミチは再び居合い拳を健二へと放った。
(よし、これなら防げる)
健二は自分に迫ってくる居合い拳を確実に二棍を持って弾き落としていく。撃ち落としてはいるものの、先ほどの初撃は冷や汗ものだった。何せ健二は今この時点でも居合い拳によって放たれる拳圧を察知しているわけではないからだ。
センリガン……ネギとの仮契約で得たこのアーティファクトは眼に恩恵をもたらすものだった。全体的な視力の向上、360°に広がった視界に透視。恐るべきエミヤの弓術を保有している健二にはこれ以上ないアーティファクトだ。だが、センリガンの力はこれだけではなかった。眼に対するそれぞれの恩恵に調節が効くのだ。
例えば、透視を止める代わりに動体視力を更に引き上げたり。視界を通常に戻す代わりに透視能力を強化したり、だ。このタカミチとの戦い、健二はセンリガンの能力を動体視力の向上だけにあてている。表裏を合わせても、他の誰にも追随できぬほどの動体視力を一時的に得た健二はタカミチの居合い拳……拳をポケットから解き放ち、再びポケットに戻すその工程を完全に捕えていた。
放っている
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