第十二話 〜わたしの帰る場所 -Home-【暁 Ver】
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「だめだっ、間に合わない。接触するっ。……5、4、3、2、1」
ヴァイスさんの切羽詰まった声と同時に何かが、ハッチから飛び込んできた。ふわりと飛び込んできた『それ』は高いところから落ちた猫のように、四肢を着いて音もなく降りたった。女性らしいラインが、はっきりとわかる青色のバリアジャケット。雲のように真白なプロテクター。『空』を体に纏ったその人は、ゆっくりと立ち上がると──── 可愛いくしゃみをしました。
「アスナ、勘弁してくれ。せめて通信入れてくれるとか、識別コード出してくれるとかさ」
「……ヘリのにーちゃんは、フェイトのお尻をときどきガン見してるな?」
「いきなりなんだっ」
「ヴァイス君、ちょっと」
なのはさんの顔がちょっと怖くなりました。いつもの喧噪、いつものやり取り。早鐘のようだった胸の鼓動もいつの間にか落ち着いている。でも────
「……こわい?」
はっと顔を上げる。アスナさんの……じっと見つめられると、少し落ち着かなくなってしまう瞳が、わたしを見つめている。はい、怖いです。
「……そこにお座りなさい」
え、えっと……もう座ってます。わたしがそう言うとアスナさんが、目の前の床にぺたりと座り込んだ。そして、アスナさんの口から発せられた言葉は、少なからず、わたしが驚いてしまうものでした。
「……私もこわい」
スバルが驚いた顔してる。でもきっと、あたしも似たような表情をしてるはずだ。少し前まで自分とあたし達以外には、まるで無関心だったアスナが──── 彼女に何かを伝えようとしている。何度も口を開きかけて、そのたびに噤んでしまうアスナを見ながら、隣にいるスバルを見る。スバルは口べたで不器用な妹を見るような目で、落ち着かない様子だ。きっと、アスナは少しずつ──── 変わろうとしている。
スバルが言ったことをあたしが憶えているのか、それともあたしがそう思ったのか。よく憶えてはいないけれど、アスナには人を変える力があると思う。あたしは出来るだけ興味の無いふりをしながら、アスナとキャロを見守った。
「そ、そんな……アスナさんはあんなに強くて」
「……強くなれば、こわくなくなるわけじゃない。……殴られるのもイヤだし、出来れば殴るのもイヤ。それが、こわくない人は……動物とかわらない。……だから……キャロはこわくて、いいと思う。『自分が傷つく痛みを知らない人間は、人を平気で傷つける。それが言葉であっても』……とお兄ちゃんが言ってました。……お兄ちゃんは、ときどき良いことを言いましたみたいな顔をするので、ちょっとむかつく」
アスナさんが一生懸命たどたどしい言葉で、伝えてくれた言葉。でも
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